Gamification が推進する、 企業理解の新しいカタチ

株式会社リバネス×武田薬品工業株式会社

その会場は、日本企業の主催する学生向けイベントだとは思えない雰囲気に包まれていた。40か国以上の国籍を持つ異文化の学生が集まり、英語で展開される1つのゲームにのめり込んでいた。学生が一心不乱に取り組んでいたのは「CAT–G(Career Academy in Takeda BusinessGame)」という、武田薬品工業が主催するビジネスゲームだ。

新薬メーカーを理解するツールとしてのゲーム

企業への就職を希望する学生にとって、企業研究はとても重要だ。その企業ではどんな仕事をしているのか、どんなことを目指しているのか、業界の中でどんな強みがあるのか等、自分が入社するかもしれない企業について知りたいことは山ほどあるだろう。一方で、企業のことを直接知ることができる機会はインターンシップや会社説明会など、限られている。この限られた機会に、Gamificationを取り入れて、企業理解を推進する動きが始まっている。その代表的な例が、武田薬品工業が主催する「CAT-G」だ。

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これは、新薬の候補物質から医薬品として承認を受ける物質が見つかる確率だ。日本製薬工業協会によると、平均すると9〜17年という歳月をかけ、ようやく1つの新しい医薬品を開発することが出来るという。このように、新薬メーカーは長期間に渡る研究開発のリスクを取り、1つの製品を世に送り出していく。その全体像を社外から理解するのは非常に困難だ。社内に入ったとしても、研究〜臨床試験〜承認〜製造〜販売という一連の流れのすべての役割を経験することは難しい。そこで武田ではこれら製薬ビジネスの流れや新薬メーカーの社会的役割を体験し、理解を深めることが出来るシミュレーションゲーム「CAT-G」を開発した。新薬メーカーのビジネスモデル理解に的を絞って設計され、新薬の効能やインパクト、残特許期間をめぐる攻防、対象疾患のマーケティングなど、製薬企業と切っても切れない要素が導入されている。

多国籍のコミュニケーションが

これからのビジネスに不可欠ゲームは5年を1期とする時間軸で進められ、期ごとにどのような研究戦略、マーケティング戦略をとるか、制限時間内に意志決定してノートPC端末で入力する。各チームが入力した戦略によって、その期の売上が決まる。これを7期(=35年)行い、キャッシュ、人材、研究開発の結果などを総合的に勘案した株価も含めた会社価値の合計が高い会社が勝者となる。また、4人のプレイヤーが共同で1つの製薬企業を経営する。4人は全く異なる部門の決定権者の役割が割り振られ、それぞれが異なる情報にアクセスできる権限を渡される。それぞれのプレイヤーは、みんながアクセスできる情報と自分しかアクセス出来ない情報を組合せ、以下のポイントに置いて最適な意思決定をして行かなければならない。

研究開発担当:研究開発のプロジェクト管理、R&Dチームの採用・育成
販売戦略担当:MRチームの人員配置・採用・育成
経営戦略担当:競合他社の情報収集と突発的に発生するイベントへの対応
代表:海外進出や医薬品製造量の決定、他の3名の意思決定を決済

そのため、このゲームでは自社、競合、市場がどのように変化するか考えて、どのような打ち手をとるか、素早く判断していかなくてはならない。そこで重要となるのがコミュニケーションだ。それぞれが持つ情報の中から限られた時間内に必要な情報を素早く共有し、正しい意思決定に繋げていく必要がある。また、CAT-Gでは積極的に留学生や海外の大学生にも門戸を広げている。異文化、多言語のプレイヤーが集まり、コミュニケーションの難易度は否が応でも上がる。このような状況の中で意思疎通を図っていくスキルは、現実の世界でも当然のように求められているのだ。

自らのキャリア形成に必要な知識を得てほしい

成績に一喜一憂することがゲームの本質ではない。他社分析から始まる戦略がピタリとはまって、競合の特許切れに合わせて大型新薬を上市できたときや、競合の少ない市場で大きく販売を伸ばせたときの成功要因を考えること、また、思うようにチームの意思統一がとれなかったときの反省などから、新薬メーカーが重視しているポイントやビジネスのキーファクターを感じ、学びとることがこのイベントの正しい関わり方だ。もちろんゲームである以上、抽象化している要素は多々あり、全てを知ることは出来ない。ただ、武田とリバネスがゲーム開発において最も重要視したことは、一通りの役割を体験することで製薬ビジネスの面白さと難しさを同時に味わえること、各部署がそれぞれの役割をはたすことで1つの会社が動いているという全体像を理解できるようになること、そして、特許や海外展開、市場のグローバル化など、既に製薬ビジネスの周りで起こっている、重要な観点・知見を盛り込むことだ。楽しませるだけじゃ能がない、自らのキャリア形成に必要な知識を得る場所を提供したい。Career Academy in Takeda Business Gameはキャリアを拡げるきっかけを掴みたいと考える、志ある学生の挑戦を待っている。

参加者の声

We were engaged in excellent game-style tasks which were very
challenging and rewarding.

I learned how important it is to quantitatively understand the
trends at other companies.

The timing for things like investment, and development strategies
and plans with a long-term point of view, are critical.