新しいこと、至上主義。

新しいこと、至上主義。

面白法人カヤックCTO 貝畑政徳さん

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面白法人カヤックは今年6月、「研究者=つくる人」の採用という目的のためにリバネス研究費カヤック賞の公募をスタートさせた。自らを「面白法人」と名乗る同社。日本最大の「声」のコミュニティ「こえ部」をはじめとしたユニークなサービスを提供し、サイコロの出た目で給料が増える「サイコロ給」など、独自の社内制度が数多く存在する。クリエイター集団と称され、一見研究者とは異質に見える彼らの根底には、研究者と共通する価値観があった。

面白さはユニークさ

カヤックを理解するうえでもっとも象徴的なものが「つくる人を増やす。」という経営理念だ。「『つくる』という言葉は、『考える』ことと同義だと思っています。カヤックにおける『面白いこと』とは、新しいこと・オリジナリティがあること。技術者は考えることで新しい発想を生み、オリジナリティのあるものをつくる。だからつくることは考えることなんです」。創業者の1人であり、同社のCTOを務める貝畑政徳さんは語る。自身も慶應義塾大学大学院政策・メディア研究科の修士課程を修了し、同社のWebサービス開発の最前線を担っているエンジニアだ。

歓迎、アカデミア志向の研究者

貝畑さんは面白さには2種類あると考えている。1つ目は周りが全然わかってくれなくても自分が信じるマニアックともいえる面白さ。そして2つ目は一般的な尺度での面白さ。カヤックでは技術者がマニアックな面白さを追求することを推奨している。「技術者が一般的な面白さやサービスとしての収益性を狙おうとすると、平凡なものになってしまうことも多い。だったら、マニアックさを追求するほうがいいと考えているんです」。たとえば、先に紹介した「こえ部」というサービスは、特別なアプリケーションを入れることなくサイト上で簡単に音声の録音が可能となる技術を使いたいという技術者の思いが発端となった、その技術のみリリースしても利用はされない。そこで音声の投稿を欲する声優・ナレーターを対象とし、彼らが集える場所として、お題に対してみんながセリフなどを投稿していくコミュニティとしてリリースした。この設定で多くの人が面白がって使ってくれるようになったのだという。すぐには世の中に出ることが少ない大学の研究からも面白いサービスは生み出せる。だからそれを生み出す研究者はカヤックにとって価値観を共有できる仲間になれると考えているのだ。

何をするかより誰とするか

新しいものをつくることに情熱を傾けるカヤックには、様々な強みを持った人々が集まる。美しいプログラムをつくれる人、面白いと思ってもらえる世界観をつくれる人、ユニークなデザインをつくれる人、音楽をつくれる人。異なる強みを持つ仲間が集まることで、オリジナリティあふれるサービスをつくることができるのだ。「研究費はつくる人を応援するという、僕らの理念とつながる活動。それが採用活動につながるならそんなに素晴らしいことはない。もっと多くの研究者にカヤックの価値観を知ってもらい、一緒に面白いことがやりたいんです。カヤックに興味を持ってくれて入社してくれることももちろんですが、大学との共同研究でもいいですね。」淡々とした口調ながら、面白いものをつくることを貪欲に追及する貝畑さんは、まるで自分の研究にのめりこむ研究者のように見えた。この会社と同じ空気を感じた人は、ぜひリバネス研究費カヤック賞に応募してみよう。(文 長谷川和宏)