理系女性の等身大の魅力を発信する、講談社「Rikejoプロジェクト」始動!!
曽根 美紀子 さん
奥田 郁美 さん
2009年に東北大学大学院を修了後、医療機器メーカーに入社し、品質保証業務に携わる。2008年に東海大学大学院を修了後、在学中からインターンシップとして参加していた株式会社リバネスに入社。小中高生向けの実験教室の企画・運営の他、理系女性の仕事復帰などの業務に携わる。
大学での理系女性のキャリア支援が本格的にスタートしている一方で、理系女性向けの情報発信を行う企業は少ない。そんな中でバラエティに富んだ書籍や雑誌で幅広く女性からの支持を受けている講談社が、「女の子への理系進路専門の進路相談室『Rikejo』プロジェクト」を発足した。まだまだロールモデルが少ないと言われる理系女性。ここでは、通常の進路相談や将来の悩みに加えて、今まさに社会で活躍している理系女性や、理系を選択し夢に向かって努力を続ける大学生・大学院生の等身大の姿を紹介することで、理系女性の強みやキャリアに対する考え方を発信する。
得意不得意ではなく、「やりたい!」で選択した進路
奥田 理系進路を選んだきっかけって、覚えていますか?
曽根 中学生の時、祖父が入院したことをきっかけに「いのちを助ける医療機器」に関心を持ちました。それ以来、ずっと医療系の学部に進みたいとは思っていましたが、直接的なきっかけは大学のオープンキャンパスに参加したことですね。工学部で医学と工学が連携した研究の話を聞いて、ピン!ときたんです。
奥田 “工学部で医療”って高校生のときには、なかなか見えない選択肢ですよね。進学するにあたり、不安はなかったですか?
曽根 もちろん、ありましたよ。理系科目が得意ではないけれども大丈夫だろうか、工学部の女子が少ない環境でやっていけるだろうかといった、女子高生が誰でも思うような不安がありました。でも、それよりも「やりたい!」という想いの方が強かったですね。興味あるものへチャレンジしていけることが嬉しかったです。
奥田 実際に、入学していかがでしたか?
曽根 見事に男子ばかりでした。私の所属していた機械系では,1学年で250名くらいいる中で、女性は14名。先生も、約100名中、女性は4~5名だったと思います。でも友達って、女子だけではないですよね。入学してみれば,それまでの不安なんて全く気になりませんでした。
奥田 研究室では、どんなテーマで研究をされたんですか?また、選んだきっかけがあれば教えてください。
曽根 大学3年からは触感計測用センサシステムをテーマに研究しました。材料をセンサで触って、その固さや表面の粗さなどを数値で測定します。医療分野ではがんの触診に応用できる研究で、前立腺がんの触診は臨床でも実験されて有効性が示されています。選んだ理由は、医療機器への応用という点。それともう1つ、これまで受けてきた講義も影響していたかもしれません。機械系の専門基盤科目として学ぶ材料に関する講義が面白くて、他学科である材料工学科まで講義を取りに行くほどでした。材料に負荷をかける位置や力と材料の挙動の関係や,材料の物性を知ることが面白かったんです。
奥田 なるほど。中高時代から持っていた「医療機器に携わる」ということと、大学で興味を持ったことを重ね合わせた研究室を選ばれたわけですね。
曽根 でも、“材料”も、触感計測用システムの研究で重要になる“電気”の分野も、実は苦手だったんですよ。“材料”は赤点ギリギリでしたし、“電気”なんて…。でも、「やりたい」という気持ちが強かったですね。
また、研究室の先生が女性だったもの大きく影響したと思います。やはり、私が選んできた進路から続く道を先に進んでいる人が身近にいるというのは、安心感がありますよね。
経験したことのアウトプットを楽しむ
奥田 女性教授のもとに行くことで何か特徴はありましたか?
曽根 先生から紹介されて、理系女性が集う活動に参加することができました。1つは、同じ機械系の学部生~大学院生、教授まで幅広い年齢の理系女性が集まり、食事をしながら、研究室選びや就職、サイエンスなど身近な話題について話すものでした。分野が違うと考え方や研究のアプローチも違ってくるので、研究の情報交換も楽しめました。その他にも、他学部の学生と一緒に中高生を対象にサイエンスや理系進学の魅力を伝える活動などもしていました。
奥田 参加してみていかがでしたか?
曽根 先輩後輩という縦のつながりを得られたことがよかったです。普段、男性ばかりに囲まれているので、女性が多い環境は、なんとなくほっとしますね。それに、「中高生に教える」という活動も好きでした。
奥田 教えたことで相手が「なるほど!」「面白い!」と感じ、眼を輝かす瞬間は、本当に嬉しいですよね。
曽根 はい。どうやったら、興味を持ってもらえるか悩みながら、プログラムを検討するので,成功したときの感動も大きいです。また、理系人材が苦手だと言われるプレゼンテーションを得意にしたいと思っていたので、自分の経験を外へ発信することには積極的に取り組みました。
奥田 なるほど、理系だとアウトプットが苦手な方も多いですが、それが好きであれば、スキルを磨き放題の環境ですよね。研究室の研究報告、学会発表、論文出稿など色々とアウトプットの機会はありますから。
曽根 そうかもしれません。実験で探究すること以上に、それを論文にまとめたり発表したり、アウトプットすることが楽しかったです。
理系女性だけに囲まれる希少体験で見つめる自分の姿
奥田 先日開催された、「理系女子cafe」では、パネラーとして参加されて、いかがでしたか?
曽根 大学時代にお世話になった先生から、Rikejoプロジェクトを紹介してもらい、また同様な活動ができると聞き、早速登録しました。実際に参加してみると、自分の仕事を見つめ直すという意味で、とても刺激になりました。
入社当時は,自分の担当する業務がアウトプットできる仕事であることにとても魅力的に感じていたことを思い出したんです。技術的な内容でもあるので、理系出身者でないと技術の理解やその背景を理解して伝えることは難しく、伝える相手にとって重要なポイントや,その根拠となる内容を抽出してレポートを作ることもできません。どうすれば効果的に本質を伝えられるかを考え、専門分野や経験を考慮して人に伝えるのです。とても誇りの持てる仕事であると改めて気づきました。パネラーの経験は、これから仕事に取り組む自分の姿勢を確認するためのとてもいい機会だったと思います。
奥田 最後に、Rikejoプロジェクトへの参加の手始めとして、理系女子cafeにどんな人に参加してもらったらいいと思いますか?
曽根 理系女子cafeは学生、研究職の方、文系就職した方、主婦の方など、様々な環境の方がいることが一番の魅力だと思います。だから、どんな環境にいる方にも参加してほしいですね。新しい人に出会い、発信することで、改めて気づくことがあります。私は同じ理系女性との出会いや、後輩への発信が、他人から興味を持ってもらう機会になり、それが自信につながっていると感じています。これからも,どんどん新しい環境に踏み出して様々な人と出会っていきたいです。
ぜひ、悩んだときこそ、新しい一歩を踏み出してください。