「なんでもこい!」町工場には対応力がある 有限会社サトウ化成

「なんでもこい!」町工場には対応力がある 有限会社サトウ化成

有限会社サトウ化成 代表取締役 佐藤 憲司 さん

ウレタンを中心に様々な形に型抜きを行う東京都墨田区型抜き加工のサトウ化成。先代が脱サラ
して始めた平成生まれの町工場は型抜きにとどまらず、幅広い事業を展開し始めている。二代目代
表取締役佐藤憲司さんは、新しい事業を模索する中で出会った研究者との議論がおもしろい、と言う。
全く畑の違う佐藤さんが感じた、研究現場の魅力とは?

平成生まれのベンチャー町工場
有限会社サトウ化成はウレタンなどの 型抜き加工を主体事業とする町工場だ。 加工された製品は、医療品や電化製品 を保護する緩衝材などに使われている。 同社の強みはウレタンやポリエチレ ン、ゴム、樹脂シート、紙など金属以外 の幅広い素材を型抜きしているところ だ。車加工なら車だけ、ゴム加工ならゴ ムだけといった加工を受ける企業が多い 中、素材を限定しない珍しい事業形態を とっている。創業は平成元年で、墨田の 町工場の中では新しい会社だ。もともと 工場だった母方の実家を譲り受け、父親婦人服営業の仕事を辞めて立ち上げ た。経済成長がどんどんのびてきた時代 を過ぎてからの起業だったが、「おやじ が欲張らなかったから続けられた」と佐 藤さんは話す。仕事がないならないで良 く釣りに行き、目の前にあるもので満足 する生活を送っていたのだ。婦人服の営 業時代に培った、梱包のノウハウや、営 業トークのノウハウが活き、次第にお客 さんが集まったという。

人との出会いが次の財産をつくる
現在は型抜きに留まらず、様々な加工 や商品を扱うサトウ化成。撥水や撥油が 必要な刃物に施すフッ素コート加工もその1つだ。はさみ に粘着性のあるテー プがつかなくなった り、汚れを嫌う医療 機器等に使われる。「コーティングの用 途は僕もわからない くらいたくさんある んです」という。今 はガラスコーティン グにも挑戦中だ。こ うした新しい事業 を、佐藤さんは異業 種交流会で出会った 人脈から見つけてく る。きっかけは墨田 区が主催する若手経 営者養成事業のフロ ンティアすみだ塾 だった。墨田区の町工場経営者が集まり、情報交換や経営に ついて学ぶ塾だ。ここには、不況の中で も誇りと広い視野をもって新しいビジネ スを開拓しようとする同年代の若手経営 者や非常に知識の引き出しの多いベテラ ン経営者もいた。「彼らと触れ合った瞬 間、目の前がポーンと開けました」。佐 藤さんは今まで出会ったことのない人と の議論や人脈こそ、次の財産になると気 づいたのだ。

研究者のニーズはおもしろい
積極的に外部と連携するようになった 佐藤さんが今おもしろい、と感じている のが研究者との交流だ。墨田区が主催す る研究現場のニーズをマッチングするイ ベントに参加し、その縁で研究者と海洋 調査に用いる機器のフッ素コーティング である実験を計画中だ。「思いもよらな かったニーズを伝えてくれる。自分の知 らないことは自分が伸ばせる伸びしろで す」。町工場は小回りが効くので、些細 な課題でも相談にのれるところも研究現 場の細かいニーズに対応できる可能性を もっている。「できることはあります。 みなさんとまず会ってみたい」。新しい 相談や提案は自分の得てきた知識や経験 値を高める。その経験を新しい事業展開 や付加価値の創造につなげ、価格競争で はなく同社を頼ってくれるいいお付き合 いができる顧客を増やしていきたいと考 えている。もし、話してみたい事があれ ば一度墨田区を訪れてほしい、そこには きっと課題解決の糸口が転がっているに 違いない。 (文 齊藤想聖)

佐藤憲司さん プロフィール

1993年立正大学卒業。株式会社クエストに入社しプロ グラマーを6年経験した後、有限会社サトウ化成に入社。 2009年にフロンティアすみだ塾に入塾。一般社団法人配 財プロジェクト理事、映像情報士。「楽しく仕事をする」がモッ トー!!