課題研究応援プロジェクト始めます!〜大阪工業大学〜
明らかになった中高における課題研究の「問題点」
2014年12月、リバネスが主催する日本最大の中高生のための学会「サイエンスキャッスル」が開かれました。東京、神戸の会場を合わせて88校が参加し、口頭発表とポスター発表の総数は209件となりました。「レベルアップ」を目標とした今年は、口頭発表のみならず、全てのポスター発表についても審査を実施し、現役の研究者から各研究に対するフィードバックを行いました。ここでは、審査結果の分析から明らかになった課題研究の2つの問題点と大阪工業大学が行う新たな取り組みについて紹介します。
問題点1:研究の始まりにあたる「疑問と仮説」がない
ポスター発表審査に使用した11の評価項目を集計し、中高生の課題研究発表に不足している項目をまとめた結果、最も結果が悪かった項目は「研究に背景、仮説、研究手法、結果、考察の流れがあるか」でした。サイエンスキャッスルで発表された研究の66%に、その流れが無いことが明らかになりました。
さらに、審査員へのヒアリングから、上記の流れの中でも特に研究の始まりにあたる「疑問と仮説」がない発表が多いことがわかりました。そのためか興味がある実験を試し、結果をまとめたものや、出てきたデータに対して意味を見出すことができていないものが多くありました。何を検証するべき研究なのかを明確にした研究計画ができていないことが明らかになりました。
問題点2:研究の指導サポートの不足
このような課題研究の現状に対して、学校現場ではどのようなニーズがあるのでしょうか。グラフ2は教員が欲しい研究サポートについてアンケートを取った結果です。一番のニーズは大学・研究機関との共同研究、相談サポートであることがわかりました。進め方に関するアドバイスや研究者によるサポート体制がほしいという意見が多くありました。生徒が研究活動に踏み出そうとした際の適切な指導を求めていることがわかります。
まとめ
- 研究の始まりにあたる疑問と仮説がない(もしくは整理されていない)学校が多い
- 研究指導の体制が不十分であり、大学・研究機関などからの研究サポートが必要とされている
課題解決に向けて
今回浮き彫りになった課題に対し、理工系教育の未来を考える大阪工業大学は「課題研究応援プロジェクト」を開始します。取り組みの一つは理科室等に掲示できるサイエンスポスターです。今回のテーマは「世の中の事象をシンプルな式や法則で表す物理学」です。起きてから寝るまでの間で、教科書で習う物理法則がどのように身の回りの出来事に関わってくるのかを説明します。また、課題研究につながる身近な疑問や仮説を提示することで、生徒が研究のきっかけを掴むことを目的としています。
もう一つの取り組みは、「高校生のための研究相談窓口」の開設です。学校で研究を進めるにあたって、「進め方・まとめ方がわからない」「専門家の助言がほしい」等の要望に対応します。「生物、環境、化学分野」、「機械、ロボット分野」、「土木・建築・デザイン分野」、「電気・電子分野」、「情報分野」、「知的財産分野」のスペシャリストによるアドバイスはもちろん、データの測定・分析、実験材料の加工に大学の施設・設備を活用することも可能です。研究者として守るべきルールや特許申請など知的財産に関する相談も含めて、課題研究に取り組む高校生を応援するプロジェクトです。ぜひお気軽にお問い合わせください。
相談窓口URLはこちら
リンク先が開かない場合は、[email protected]に以下5点をメールください。①学校名・学年・代表者氏名②相談・質問の内容③相談する目的④回答期限(期限の有無)⑤代表者の連絡先 ※即日回答はできません。また、研究分野・専門性によってはご希望に添えない場合もあります。
大学担当者からのメッセージ
研究に失敗はつきものですが、その失敗から得られることがたくさんあります。課題研究に取り組む皆さんには、失敗しても視点や手法を手直しして粘り強く取り組み、さまざまな人々と意見交換・協力しながら丁寧に研究をやり遂げる力を身に付けてほしいと願います。大いに学んで迷って、困ったときは大阪工業大学に相談してください。皆さん自身が気付きを得て、一段階上の思考力や行動力を身に付けられるよう全力でサポートいたします。