中高生が自作の電波望遠鏡で宇宙観測をスタート KIMOTSUKI SPACE CAMP 2019 実施報告

中高生が自作の電波望遠鏡で宇宙観測をスタート KIMOTSUKI SPACE CAMP 2019 実施報告

 2019年11月2日から11月4日の3日間、KIMOTSUKI SPACE CAMP 2019を実施しました。日本の宇宙開発で重要な役割を果たしてきた内之浦宇宙空間観測所のある鹿児島県肝付町は、スペースサイエンスタウン構想のもとに次世代の宇宙人材の育成にも取り組んでいます。今年度で3回目となるKIMOTSUKI SPACE CAMPでは、新たに「電波観測」をテーマに活動を行いました。日本全国から集まった15名のメンバーが取り組んだ濃密な3日間の様子をご報告します。

 

1日目

 日本各地から鹿児島空港に集合した中高生15名はバスで会場のコスモピア内之浦に移動し、キャンプがスタートしました。今回のミッションは「新たな電波観測プロジェクトを立ち上げよ!」一体どんなアイデアが生まれるのでしょうか。開会式では肝付町の永野和行町長にもお越しいただき、歓迎と激励のお言葉を頂きました。

町長と一緒に集合写真

1日目は電波観測の基礎を学び、自作の電波望遠鏡づくりに挑戦しました。宇宙からは実は様々な電波が地球上に届いています。その電波を解析して宇宙の姿を明らかにしていくのが電波天文学です。一般に電波望遠鏡と言うと大きなパラボラアンテナが印象的ですが、実際に電波観測を行うにはアンテナだけでなく、電波を増幅する増幅器、電波を測れるようにする検波器、電波の強さを把握する記録系も必要になります。この4つの要素を揃えれば、実は自分でも電波望遠鏡が作れてしまうのです。今回はこの電波望遠鏡を使って、太陽の温度を観測していきます。

まずは講師から、電波望遠鏡の基礎知識を学びます。

 電波望遠鏡の仕組みがわかったら、その中でも特に大事な「検波器」の制作を行いました。今回制作したのは倍電圧型検波器というもの。難しい表面実装のはんだ付けもこなし、全員検波器を完成させました。

はんだ付けで銅板にダイオードやコンデンサーなどをつけ、回路を組み立てていきます。

はんだ付けで銅板にダイオードやコンデンサーなどをつけ、回路を組み立てていきます。

検波器ができたら、次は記録計の作成です。今回はArduinoを使って、検波器からの信号を記録しました。組み立てだけでなくプログラミングも自分自身で入力していきます。

Arduinoを動かすためにプログラムを入力していきます。

Arduinoを動かすためにプログラムを入力していきます。

やっと部品が揃いました。BSアンテナとテレビのブースター、そして作った検波器と記録計をつなげて自作電波望遠鏡の完成です!宇宙観測に便利なように、赤道儀付きの架台も取り付けました。翌日はいよいよ太陽を観測します。

今回利用したアンテナはスカパーJSAT株式会社様よりご提供いただきました。

今回利用したアンテナはスカパーJSAT株式会社様よりご提供いただきました。

1日目の夜は天気に恵まれ、急遽天体観測も行いました。都会では見られない見事な星空に一同大興奮で初日を終えました。

満天の星空!!

満天の星空!!

 

2日目

 盛りだくさんの2日目は、内之浦町の宇宙関連施設の見学からスタートしました。きもつき宇宙協議会の森永幸平さんの解説のもと、日本から初めて打ち上げられた人工衛星おおすみと交信していたアンテナや、宇宙科学資料館、そして内之浦宇宙空間観測所の中を見学し、肝付町で進められてきた宇宙開発の歴史を教えていただきました。そして、内之浦宇宙空間観測所内で電波観測を行いました。アンテナを太陽の方に向け、太陽から届く電波の強度を測定しました。観測後はデータ解析を行い、太陽の彩層の温度を観測することができました。

1日目に制作した望遠鏡を組み立てます

1日目に制作した望遠鏡を組み立てます

いざ観測!!

いざ観測!!

午後は鹿児島大学理学部の中川亜紀治先生に「VLBI技術で実現する精密な観測 ~星の距離から銀河の様子を探る~」というテーマでご講演をいただきました。宇宙が大好きな子どもたちも知らなかった天体の様子、そしてまだまだ謎にあふれる宇宙の魅力を語っていただきました。また、大学での研究や天文学者のリアルな姿にも触れられる貴重な機会となりました。

本物の天文学者が取り組む最先端の天文学のお話。皆真剣です。

本物の天文学者が取り組む最先端の天文学のお話。皆真剣です。

電波望遠鏡の基礎を知り、最先端の天文学を知った後は、いよいよ今回のミッション「新たな電波観測プロジェクトを立ち上げよ!」に取り組みました。まず、自分たちが気になる宇宙の現象や、宇宙開発における課題を書き出しました。現在の観測対象・観測機器それぞれの観点からイシューを学んだ後、班で取り組むテーマを決定しました。

皆で出し合ったたくさんのアイデアから、テーマを考えていきます。

皆で出し合ったたくさんのアイデアから、テーマを考えていきます。

3日目

 とうとう最終日。発表資料を作り込み、最終発表会に臨みました。今回は参加者全員が審査員。自分が参加してみたい観測プロジェクトに投票を行いました。

発表資料は以下よりご覧になれます。

1班:TOYOROKOKO株式会社 「民間個人電波望遠鏡のシステム開発」

2班:MUSST「New encounter」

3班:さぁもん「太陽と月~人工衛星を救え~」

ベストプロジェクト賞は僅差でさぁもんが受賞。皆さん素晴らしい発表でした。

 3日間宇宙漬けで過ごした参加者からは次のような声が聞かれました。

  • 今回宇宙好きな人たちと話し合って、情報をもらって、”好き”で集まって、自分の宇宙に対する気持ちを確認できた。
  • ガチな宇宙開発は初めてなので、こんな自分たちでできるんだ、と思った。発表したプロジェクトも本気でやりたい。人間関係やプロフェッショナルの言葉は本当に大事。
  • ここに来るでパソコンや半田付けは何もできない状態だった。数式なども意味がわからない状態だったけれど、作っているうちに理解できることは面白いことだと思ったので、帰ってからもこういうことに挑戦したい。

 

そして、多くの参加者が、「明日からの行動」と「将来の目標」を語ってくれたことが印象的でした。これから、皆の真の挑戦がはじまります。

帰り際に参加者皆で!短い時間でしたが、内之浦の美しい自然も楽しみました。

帰り際に参加者皆で!短い時間でしたが、内之浦の美しい自然も楽しみました。

 

 本年で3回目を迎えるKIMOTSUKI SPACE CAMPを通して、リバネスでは本気で宇宙開発に取り組む中高生に出会ってきました。キャンプの終了後もプロジェクトの実現に向けて、実際に行動を続ける参加者も少なくありません。彼らの宇宙への興味と熱意が今後の宇宙産業、そして科学技術の発展を担っていくと信じています。リバネスでは今後も中高生、そして卒業生である大学生のリアル宇宙開発に向けた取り組みを応援してまいります。このプロジェクトに協力いただける企業、個人、団体の皆さまはぜひお声がけください。共に、誰もが宇宙開発に取り組める新たな時代を作っていきましょう。

 

キャンプ概要

日時:2019年11月2日(土)〜11月4日(月)

場所:鹿児島県肝属郡肝付町

   国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構内之浦宇宙空間観測所

   コスモピア内之浦 等

主催:肝付町

企画・運営:株式会社リバネス

旅行業務:有限会社インターナショナルツアーアシスタンス
協力:
株式会社宙の駅

機材協力:スカパーJSAT株式会社

本件に関するお問い合わせ

株式会社リバネス地域開発事業部

担当:重永

電話:03-5227-4198 メール:[email protected]