理系女子学生のパワーが、 大学全体を巻き込み変えていく-東京都市大学-
東京都市大学は、創立80周年を迎えた武蔵工業大学が改称し2009年に誕生。現在6学部18学科を擁する同大は、工学、環境、情報、都市生活、幼児教育の各分野にわたる研究・教育活動を展開しながら、東京・横浜圏で存在感を示す都市型総合大学だ。創立より工学教育を基盤に歴史と伝統を築いてきた同大だが、男女共同参画の必要性が早くから提唱され、2009年には「女性研究者支援室」を開設、主に女性研究者支援に取り組んできた。現在は「男女共同参画室」として、女性研究者・女子学生の支援にとどまらず男子学生も巻き込んだ様々なプロジェクトを展開し、その活動範囲を広げている。
“カチンコチン”を変えるために
女性の活躍を支援する、女性のための部屋という「男女共同参画室」のイメージは、ここ東京都市大学では少し違うようだ。「自分たちも来ていいんですか?」と男子学生も気軽に訪れ、様々な相談をしては足取り軽く帰っていく。
同室の室長を務める岡田先生は、今から32年前に同大学の原子力研究所に赴任し、原子炉を用いた中性子放射化分析の研究に取り組んだ。そこで感じた周りの男性研究者とのギャップが、先生の男女共同参画に対する想いの原点だ。当時、生物学から物理学という異分野の世界に飛び込んできた先生が研究を進めるには、周りの研究者のサポートが不可欠だった。しかし、「女性がそこまでやらなくていいよ」となかなか支援が得られず、居心地の悪さを感じた。また、同じような考え方をもつ人間だけで議論され、いろいろな新しいものが創出されにくい“カチンコチン”な印象を受けたという。
女性ならではの視点を活かす
「今、多様な視点をもつ女性の力が研究の世界にも必要な気がします」。研究者時代に独自で取り組んできた小学校への出前実験教室などの経験を活かし、先生は学生と一緒になって女性研究者のキャリアを支援する様々な活動を行ってきた。次世代育成のための科学教室やOGによるキャリア相談会などその活動の幅は次第に広がり、学内でも先進的な教育連携の仕組みが育ちつつある。2014年に企業と連携して実施した「未来の車を考える」ワークショップでは、乗るだけで美容健康管理ができる車など女性らしいアイデアが場を盛り上げた。先生は女子学生が活き活きと活躍できる場所を作り、その姿を発信していくことで、少しずつ周囲を変えていこうとしている。
男子も巻き込み、そのうねりは学内全体へ
女性の社会進出のためには男性の理解が欠かせない。両者が互いに協力してひとつの物事を成し遂げる機会が増えることは望ましい傾向だ。「男子も女子も活躍できるような仕掛けをつくっていきたい」。男女問わず、何かに挑戦したいときや困ったときに、気軽に相談して次の一歩を踏み出せる場所を提供したいと先生は考える。
入学前から「女子が少ない」ことを覚悟している工学部の女子学生は、とてもたくましく、男子を引っ張る力を内に秘めている。女子が男子を巻き込んで、学科を超えたネットワークを築くことで、同室の活動の幅はさらに深化を続けている。男女共同参画室を中心に、学生たちの活動が今後どのように発展していくのか楽しみだ。
「共に学び」「共に働き」「共に築く」都市大スタイルを目指します
東京都市大学 男女共同参画室▼http://www.sankaku.tcu.ac.jp/