植林ドローンが挑む森林再生 [BioCarbon Engineering]
近年、「ドローン」がニュースを賑わせている。2015年1月末には、ドローンの革新的技術を競うコンテストDrones for Good がドバイにて開かれ、57カ国から800以上のエントリーが集まった。見事3位の座に輝いた国際チームBioCarbon Engineeringに、林業分野に応用した植林用ドローンのプロトタイプ開発について話を伺った。
進み始めたドローンの農業利用
無人航空機(Unmanned Air Vehicle;UAV)を意味する「ドローン」には、固定翼の飛行機型から、回転翼をもつヘリコプターやマルチコプターまで含まれ、遠隔地や危険現場での使用に有効だ。実は、飛行爆弾や偵察などの軍事用途が発端だが、近年は橋の検査や、高所からのスポーツ報道、災害地や火口付近の調査などにも用途が広がる。広大な平地が広がるアメリカの農場では普及が進み、日本でも2013年にヤマハが農薬や種もみの散布が可能な新型の無人ヘリ「フェーザー」を発表した。作業の省力化や雨天時の圃場観察も可能となり、ドローンに対する農業現場の期待は高い。
既存技術を組み合わせ植林用に開発
こうした中、オックスフォードを拠点とするBioCarbon Engineeringが、森林や法規制の研究者、そして20年間NASAに勤めたエンジニアらとチームを組み、「植林ドローン」の開発に取り組んでいる。これは既存技術の組み合わせで実現可能だ。まず、ドローンは搭載されたGPSや小型カメラを使って地形データを集めて高解像度の3Dマップを作成、土壌成分、水分などの環境データも収集・解析する。どこにどの種を植えたらより多くの樹木が育つか判断したドローンはもう一度空を飛び、地上1〜2mくらいの高さから空圧で種を落とす。発芽種子は栄養分豊富な生分解性ゲルに包まれ、地面に刺さったあとは根付いて成長する。農業でも空中から“種子爆弾”を散布する実例はあるが、ランダムな投下では発芽率が低い。地形や環境データの解析と組み合わせた正確な植林が強みだ。
実証実験で森林再生のスケールアップに挑戦
彼らが目指すのは“One Billion Trees per Year”、1年間に10億本の木を植えること。熟練の職人でも1日に1,600本の植林が限度で、世界各地の森林伐採の課題に人力で立ち向かうのは厳しいが、このドローンならば1日に36,000本を植えることも夢ではない。今年は、ドローンに親和的で産業利用規制が厳しくないブラジルで実証実験を行う。実用化に向けては、地形や環境と呼応して最適な種の種類を選ぶ仕組みや、高発芽率のゲル、種投下装置も深く研究する。いずれは日本でも、土地ごとの環境や作物に合わせた「播種ドローン」として、農耕機械が活用しにくい山間地域の農業を支える必需品になるかもしれない。