農地の「見える化」で第一次産業の活性化を目指す 株式会社KAKAXI

農地の「見える化」で第一次産業の活性化を目指す 株式会社KAKAXI

総務省の発表によると、我が国の第一次産業従事者は、全産業従事者数のうち3.6%ほどしかなく、衰退の一途をたどっている。このような中、NPO法人東北開墾は日本での事業経験をもとに2015年2月上旬に株式会社KAKAXIを設立。アメリカで急速に成長しているCSA(Community Supported Agriculture)と呼ばれる農業モデルに注目し、第一次産業の活性化を目指している。

CSAのさらなる進化に向けて

CSAとは、消費者が農産物を代金前払いで、生産者から定期的に受け取るシステムである。生産者は作付け前に収入が発生するため収穫時の相場や天候リスクをヘッジすることができ、消費者は、生産者や生育方法が明確な食材を比較的安価に、安心して購入することができる。CSAを行う農家は、アメリカにおいて1990年代後半は1,000ヶ所程度であったが、2007年度には12,549ヶ所まで急速に拡大している※1。しかし、現状のCSAにおける生産者と消費者のコミュニケーションは、年に数回程度の農地訪問やニュースレターの発行に限られている。そこで株式会社KAKAXIはコミュニケーションの強化に目をつけ、CSAを行う生産者や消費者に向けたデバイスやアプリケーションの開発に挑戦している。

生産現場と消費をつなげるシステム

斬新でシンプルなデザインをもつ「KAKAXI」

斬新でシンプルなデザインをもつ「KAKAXI」

開発中のデバイスは定期的なパノラマ画像撮影・温度・湿度などのセンシング機能を持つ。太陽光発電により駆動し、機器に蓄積されたデータはBluetooth通信にて生産者が持つiPhoneアプリにデータが転送される。消費者はデバイスから送信されたデータを閲覧し、生産現場を疑似体験することができるため、生産者と消費者のコミュニケーションを活性化できるというものだ。パノラマ写真はタイムラプス映像に変換・提供されるため、生育の様子がわかる。その他のセンシングデータはキャラクター化された作物がゲーム的に喜怒哀楽を表現することで、わかりやすく楽しめる形で提供される。さらにコミュニティでは生産者に向けて質問や作った料理の写真を共有することもできるなど、コミュニケーションを活性化する仕掛けが随所にちりばめられている。

第一次産業を情報産業へ

強みは、東北開墾の事業でCSAのベースとなるコミュニティ形成を続けてきたことにある。「東北食べる通信」という情報誌では毎月1回、東北各地のこだわりの生産者を紹介、収穫した自信の一品をセットで届けている。この取り組みは昨年にグッドデザイン賞金賞を受賞し、すでに1500人規模の会員数まで成長している。新たなデバイスとアプリケーションをCSAに組み込むことで、第一次産業を単なる生産の現場としてではなく、消費者が安心・安全な生産物とその情報を含めて得ることができる情報産業として発展させることを目指している。まずはCSAが盛んなアメリカで実証を行い、そこから日本へ展開する予定だそうだ。この仕組みが成功すれば、日本の生産現場の活性化につながるかもしれない。

※1 : 2007 Census of Agriculture (2009)

株式会社KAKAXI

株式会社KAKAXI

KAKAXI http://kakaxi.jp