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【実施報告】オンラインセミナー「嗜好品5.0 〜その定義から未来へ〜」の第6回を開催しました

【実施報告】オンラインセミナー「嗜好品5.0 〜その定義から未来へ〜」の第6回を開催しました

株式会社リバネスと日本たばこ産業株式会社は、オンラインセミナー「嗜好品5.0 〜その定義から未来へ〜」を昨年度からこれまで5回にわたって開催して参りました。

これら5回の中で、社会文化人類学(第1回)脳科学(第2回)社会との関わり(第3回)次世代の嗜好品(第4回)五感との関わり(第5回)といった様々な視点から「嗜好品とはなにか」について議論してきました。

第6回となる今回は、人の「所作」と「こだわり」に注目し、心理学的な視点から人に感動をもたらす方法の研究・開発に取り組んでいる金沢工業大学の神宮英夫氏と、効率化や自動化ばかりを追求しない不便益(不便の益)システムの研究を行っている京都先端科学大学の川上 浩司氏をお招きして、「『所作』と『こだわり』がもたらす嗜好品の価値」というテーマで実施しました。

はじめに志方氏から、嗜好品を嗜む際に行う「所作」とは「自分を取り戻す時間」を作り出すために能動的に行われる動作なのではないか、「こだわり」とは「自分だけ」という差別化を演出し、自己を肯定するストーリーの構成を促す要素なのではないかという仮説が提示されました。

神宮氏からは、期待に対する結果のギャップによって人は感動するが、「こだわり」は期待に対して大きく関わる一方で、「所作」は人と物事とのインタラクションに揺らぎを与え、結果に作用しているのではないかという見方が示されました。人は感動した経験をこそよく記憶するものであり、自己を肯定するストーリーの構成には感動的な経験が深く関わっており、所作とこだわりは感動を増幅させる役割を担っているのではないかという考えが示されました。また、神宮氏は、心の動きを計測するための感動指数の開発も試みており、こうした指数の活用も嗜好品5.0に迫る上で重要ではないかとの考えも示されました

川上氏からは、まず「不便益」とは「不便の中にある益」であることが示されました。例えば、知育菓子などを袋から取り出し自分で粉を混ぜて食べるという行為は手間がかかり不便ですが、自分で粉を練って食べる楽しみがあります。「所作」も「こだわり」もこうした益をもたらす不便の仲間であるという見方が示されました。所作は効率的な動きを阻害し、こだわりは嗜好品の安近短な摂取を邪魔し得るという意味で、客観的効率を下げる可能性もありますが、それ以上に、属人的に価値づけられる効用を向上させる役割を担っているのではないかという考えが示されました。

これを受けて、客観的効率では測ることのできない、その人個人の主観的感動体験をデザインする方法を検討すること、そのような体験の構築を促す仕組みを検討することが次世代の嗜好品を考える上でのヒントになるのではないかという気づきが生まれました。

 

視聴者からもリアルタイムでコメントや質問をいただき、セミナー中の議論を更に深める意見をいただきました。

視聴者からいただいたコメント(一部抜粋)
・こだわっている、ことが大事で、本当に違いが分かっているかどうかはそこまで重要じゃないことを考えると、嗜好品は自分を肯定できる「幸せな勘違い」を提供してくれるのかなと思ったりします。
・嗜好品はモノじゃなくて、体験だけでもなくて、現象という気がしてきました。
・プラモデルは作成中にフロー状態が訪れると考えております。プラモデル作成中の生体情報を測ると面白そうです。
・「行動」や「行為」に比べて、「所作」はふくよかな意味を持った用語ですね。

後半には、視聴者の皆さんも交えた新たな共同研究プロジェクトを実施してみたいといったコメントが出るなど、本セミナーの開催を経て、嗜好品の新たな形に迫る知識のプラットフォームが生まれつつあることを感じさせる場面もありました。

これまで開催してきた、オンラインセミナー「嗜好品5.0 〜その定義から未来へ〜」を通じ、いかなる知が生まれたのか、その詳細については研究応援vol.23(2021年9月発行)に掲載予定です。

嗜好品5.0とはいかなるものなのか、引き続きみなさんと一緒に考えてまいりたいと思います。

 

【お問い合わせ先】

株式会社リバネス(担当:西村、石尾、金子) [email protected]