【調査レポート】令和4年度 学びと社会の連携促進事業(「未来の教室」(学びの場)創出事業)において企業の次世代教育への貢献活動に関する調査を実施いたしました。
リバネスでは、次世代教育で祖業して以来、自社の活動として、またはパートナー企業との活動として次世代への教育活動を推進してまいりました。そして、それらの教育活動と並行して企業の教育活動への持続可能な参画を実現するための足掛かりとして、これまでに、2010年に教育CSR白書を発刊し、2014-15年に国立教育政策研究所にて行われた、「多様なパートナーシップによるイノベーティブな生涯学習環境の基盤形成の研究」(以下、基盤形成の研究)の企業調査及び調査結果の分析に協力するなど、実態をまとめてまいりました。一方で、経済産業省・産業構造審議会「教育イノベーション小委員会」においても、”企業による次世代投資”は1つの論点として取り上げられています(※)。この指針を踏まえ、昨年度リバネスは、経済産業省令和4年度 学びと社会の連携促進事業(「未来の教室」(学びの場)創出事業)において、産業界の次世代教育への参画の現状を把握するための調査(アンケート及びヒアリング)を行いました。
本調査では、各企業がどのようなインセンティブで次世代教育参画を行っているか、また受け入れ側である学校が感じている課題やベストプラクティスをヒアリングし、今後の次世代育成投資の加速につなげることを目的として実施しました。
今回の調査から、下記に列挙するいくつかのことが見えてきました。(概要内、過去の調査と比較してと記載があるところは、上で記載する教育CSR白書と、基盤形成の研究の結果と比較)
・過去の調査と比較してCSR活動での次世代教育活動を行うことが多くの大企業において当たり前となった。
・上場企業は次世代投資活動が「組織風土に影響している」と答える割合が高く、ベンチャー企業は「企業戦略」「組織風土」両者に影響があると答える割合が高く、次世代投資活動の効果についての印象には差異が見られた。
・業態によって、教育活動に求めるインセンティブが異なることがわかった。
- 素材メーカー:社員のエンゲージメント向上、未来の雇用、社名認知度向上 など
- 最終製品メーカー:未開拓市場へのマーケティング、製品のプロモーション、社員育成 など
- 小売業:店舗ごとの地域コミュニティ形成、店舗に人が来る機会づくり、社員育成 など
・素材メーカーは「自社ブランディング、将来の雇用、社員の成長」が活動の意義として社内に浸透。過去の調査には見られた「継続に対する疑問」は出ない状態が形成できていた。
・小売等の企業は「地域コミュニティー形成」がキーワードとなり、中央集権的ではなく拠点ごとに活動の意義を見出して発展を遂げていた。
・過去の調査から社内での次世代教育の位置づけにおいて最も発展性が見られたのが最終製品メーカーであり、マーケティング戦略等に組み込まれ、攻めの投資活動ができつつある様子が見て取れた。
・資金提供や第三者評価ではなく、横連携の加速を望む声が多く聞かれた。企業間連携は1社では行いにくく、名目やコーディネーターの必要性が伺えた。
・一般的に知られていない技術や概念を扱うベンチャーでは、ビジネスの土壌づくりに繋がる場合は、教育活動への参画の可能性はあり得る。
・株価に対しては影響を実感している企業は少なかった。
今後は、本調査をもとに、企業を巻き込んだ教育活動の推進を加速するとともに、時代に合った教育活動の在り方、学校、企業・NPO団体等それぞれとの関係性について協議・検討を進め、アップデートを図り続けてまいります。
(※)産業構造審議会 商務流通情報分科会 教育イノベーション小委員会 中間とりまとめ資料より(2022年9月22日)
20220922_1.pdf (meti.go.jp)
【参考】
経済産業省は、「『未来の教室』ビジョン(2019年6月)」を踏まえ、様々な個性の子ども達が、未来を創る当事者(チェンジ・メイカー)になるための学習環境づくりを目指し、1.学びの探究化・STEAM化、2.学びの自律化・個別最適化、3.新しい学習基盤づくりを柱に、2018年度より実証事業に取り組んでいます。
「未来の教室」ってなに? (「未来の教室 ~learning innovation~」サイト)
https://www.learning-innovation.go.jp/about/
リバネスがこれまで採択を受けた新しい教育の在り方・学び方の実証に関するリリース
2018年 経産省の「未来の教室」実証事業に採択、“ワクワク”を喚起する教育プログラムを開発
2020年 実社会と学校を繋ぐSTEAMプログラムの開発&実証実験
社会と学校をつなげSTEAM教育を推進するラーニングクリエイターの育成