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株式会社リバネスと環境大善株式会社、水田への液体たい肥「土いきかえる」施用によるメタン発生を抑制する可能性を共同研究で確認

株式会社リバネスと環境大善株式会社、水田への液体たい肥「土いきかえる」施用によるメタン発生を抑制する可能性を共同研究で確認

 株式会社リバネス 知識創業研究センターは、環境大善株式会社 土、水、空気研究所と、牛の尿を微生物により分解した液体「液体たい肥 土いきかえる(以下、土いきかえる)※1」を用いた、水田からのメタン発生抑制効果について共同研究を進めてきました。本研究はBeAGRIプロジェクトの一環として行っています。BeAGRIプロジェクトとは、1次産業の現場のニーズに即した技術実証と、消費者に対する生産物の付加価値向上を図るためのテストマーケティング機能を備えた実証フィールドを開設し、アグリテックベンチャーや生産者と連携しながら農林畜産分野の課題解決を目指すプロジェクトです。
本研究では、ポットスケールおよび水田圃場において、土いきかえる施用の有無によるメタン発生の抑制効果を比較・検証しました。ポット試験はメタンが発生しやすい環境をワグネルポット内に再現し、土いきかえるを施用した施用区と未施用の対照区でメタン濃度の推移を調査しました。また、コシヒカリを栽培する水田圃場において、2024年から2025年の2年間にわたり、土いきかえるを1.8 L/反施用する施用区と通常栽培を行う対照区を設け、水田から発生するメタン量の推移を調査しました。その結果、ポット試験および水田圃場試験のどちらにおいても土いきかえる施用により、対照区と比較してメタンが低く推移する傾向が確認されました。水田への土いきかえるの施用は、水田由来メタンの発生抑制に寄与する可能性が示されました。

研究のポイント
・ポットスケールおよび水田圃場試験において、施用区では対照区よりメタンが低く推移する傾向が確認されました。
・水田圃場試験では、穂ばらみ期および移植期のいずれの施用時期においても、土いきかえる施用区でメタン発生量が低下する傾向が確認されました。

研究背景・目的
近年、持続可能な農業生産の実現に向けて、農業由来の温室効果ガス排出量の削減が求められています。水田では、湛水状態※2が続くことで土壌が酸欠状態となり、メタン生成菌※3の働きによって温室効果ガスであるメタンが発生します。水稲生産を維持しながらメタン発生を抑制する技術の開発は、農業分野における気候変動対策の重要な課題です。
環境大善株式会社は、独自の微生物発酵技術により、牛の尿をアップサイクルした「液体たい肥 土いきかえる」を製造・販売しています。これまで両社は、同製品の植物への効果について共同研究を進めており、コマツナの土耕栽培では、SPAD値、クロロフィル量、収量、根張りの向上など、植物の生育に対する良好な影響を確認してきました。また、水田で土いきかえるを使用した利用者からは、ガス湧きが抑えられたという声が寄せられていました。そこで本研究では、土いきかえるを水田に施用することで、メタン発生の抑制効果がみられるかを検証しました。

研究成果
1. ポット試験
水田では、稲わらが未熟な状態ですきこみ湛水状態になるとメタンが発生しやすくなることが知られています。そこで、ワグネルポットに水田土壌と稲わらを刻んだものを混ぜ込み充填し、湛水状態にしてメタンが発生しやすい状態を疑似的に再現しました。その上で、土いきかえる施用の有無によるメタン濃度の違いを比較・検証しました。

1-1. 試験方法
1/5000aワグネルポットに水田土壌1.5 kg、稲わら1 g、水道水1.5 Lを加え、ラップで密閉して28〜30℃の環境下で培養しました。40日後にメタンの発生を確認したため、土いきかえるを施用する施用区と施用しない対照区に分けました。施用区には土いきかえるを36 µL/ポット(圃場での施用量1.8 L/反に相当)添加し、サーモニメタンを用いてメタン濃度を測定しました(図1)。

図1 ポット試験の実験系。(A)水田土壌に稲わらを混和し湛水したワグネルポット。(B)サーモニメタンによるヘッドスペースのメタン濃度測定の様子。

1-2. 試験結果
ポット試験におけるメタン濃度は施用区、対照区ともに処理開始時が最も高く、以降は減少傾向を示しました。施用区のメタン濃度は、7日目、14日目において対照区よりも有意に低い値を示しました(図2)。21日目以降は施用区と対照区の間に有意な差は認められませんでした。また、0日目のメタン濃度を100%とした場合、対照区では7日目に48%、14日目に43%減少したのに対し、施用区では7日目に81%、14日目に85%減少しました。本試験条件下では、土いきかえる施用によるメタン濃度の抑制効果は少なくとも2週間程度維持されることが明らかとなり、土いきかえる施用により水田から発生するメタンを抑制できる可能性が示唆されました。さらなる検証のため、水田環境へとスケールアップした圃場試験を行いました。

図2 ポット試験における対照区と施用区のメタン濃度の推移。アスタリスクは対照区との有意差(p < 0.01)を示し、エラーバーは標準偏差を示します。

2. 水田圃場試験:2年間・2つの施用時期での検証
ポット試験でメタン発生を抑制できる可能性が示されたことを受け、実際の水田圃場でも効果が現れるかを検証しました。水田では、穂ばらみ期※4から出穂期※5にかけて湛水を行うためメタンフラックス※6が増加しやすいことが知られており、まず2024年に穂ばらみ期での施用を検証しました。さらに2025年には、この結果を踏まえ、作付け初期である移植期※7での施用効果もあわせて検証しました。

2-1. 試験方法
試験は、鯉淵学園農業栄養専門学校のコシヒカリを栽培する水田圃場を用い、水口から土いきかえるを1.8 L/反施用する施用区と、通常栽培を行う対照区を設けました(図3A)。メタン測定は、コシヒカリ1株を覆うようにチャンバーを被せ、処理開始時から約1週間おきに、10時から12時の間でチャンバー内のメタン濃度をサーモニメタンで複数回測定して平均値を算出しました(図3B)。得られたメタン濃度(ppm)は、水田からのメタン発生量評価に用いられるメタンフラックス単位(mg CH4/m2/h)に換算し、メタン発生量として評価しました。
施用時期と圃場は年ごとに異なり、2024年は穂ばらみ期(8月8日〜9月5日)に約20 a/枚の圃場2枚、2025年は移植期(7月3日〜7月31日)に対照区20 a・施用区22 aの圃場2枚を用いました。

図3 水田圃場試験の実験系。(A)水口からの土いきかえるの施用。(B)チャンバーを用いたメタン濃度の測定。

2-2. 試験結果
穂ばらみ期での施用(2024年)ではメタン発生量は8月15日で最も高く、対照区が35 mg CH4/m2/hまで増加したのに対し、施用区は25 mg CH4/m2/hに抑えられ、有意に低い値を示しました(図4)。同様に8月23日でも施用区が有意に低い値を示しましたが、8月28日以降は有意差が見られなくなりました。これは、出穂に伴い湛水量が減り、メタン生成菌の働きが低下したためと考えられます。

図4 穂ばらみ期の対照区と施用区におけるメタン発生量(メタンフラックス)の推移(2024年8月8日〜9月5日)。アスタリスクは対照区との有意差(p < 0.01)を示し、エラーバーは標準偏差を示します。

 2025年は、両区とも処理開始時のメタン発生量が2024年より高い値を示しました(図5)。なお、処理開始時の時点で既に施用区は対照区より低い値を示しており、施用前から両圃場間にメタン発生量の差が見られました。このため、以降で施用区が示した低い値には、土いきかえる施用による効果に加えて、圃場間のもともとの差(施用前のベースラインの違い)が寄与している可能性があります。
その上でメタンフラックスの推移をみると、両区とも7月24日に最大となり、施用区は測定期間を通じて対照区より低く推移して、7月17日を除くすべての測定日で対照区より有意に低い値を示しました。差が最も大きかった7月24日には、施用区は対照区の約49%(約51%低い値)に相当するメタンフラックスを示しました。7月17日には有意差が認められなかった一方で、翌測定日の7月24日に大きく差が開いたことは、施用前のベースライン差だけでは説明しきれず、施用による上乗せの抑制効果を示唆します。

図5 移植期の対照区と施用区におけるメタン発生量(メタンフラックス)の推移(2025年7月3日〜7月31日)。アスタリスクは対照区との有意差(p < 0.01)を示し、エラーバーは標準偏差を示します。

 2年間の圃場試験から、土いきかえるの施用は、穂ばらみ期・移植期のいずれの施用時期においても、複数の測定日で水田由来のメタン発生量を対照区より有意に低く抑える傾向が確認されました。2024年の穂ばらみ期では処理後2週間程度は施用区で有意に低い値がみられ、2025年の移植期では、両区のフラックスが最大となった7月24日には対照区の約49%(約51%低い値)に抑えられました。

今後の展望
水田から発生するメタンは、農業分野における温室効果ガス削減に向けて重要な課題のひとつです。本研究により、土いきかえるを水田に施用することで、メタン発生を抑制できる可能性が示されました。今後は、施用時期、施用量、施用回数、水管理との組み合わせを検証し、効果が安定して得られる条件の整理を進めます。あわせて、メタン発生抑制に関わる作用機序の解明を目指します。

用語解説
※1 液体たい肥 土いきかえる
牛の尿を、乳酸菌や酵母菌などの微生物により長期間分解して製造される液体たい肥。環境大善株式会社が製造・販売しており、これまでの共同研究により、植物の生育促進や根張りの向上などの効果が確認されています。

※2 湛水状態
水田に水を張った状態のことです。湛水状態が続くと土壌中の酸素が少なくなり、メタン生成菌が働きやすい環境になります。

※3 メタン生成菌
酸素が少ない環境で有機物などを分解し、メタンを生成する微生物の総称です。水田では、湛水によって土壌が酸素不足になることでメタン生成菌が働きやすくなり、メタン発生の一因となります。

※4 穂ばらみ期
イネの茎の内部で穂が成長し、外から見ると茎がふくらんで見える時期です。出穂前の重要な生育段階であり、水管理や土壌環境がメタン発生に影響する可能性があります。

※5 出穂期
イネの穂が茎の中から外に出てくる時期です。水稲栽培では生育の進行を示す重要な段階であり、水田の水管理や土壌環境の変化を通じて、メタン発生量にも影響する可能性があります。

※6 メタンフラックス
単位面積・単位時間あたりに発生するメタン量を示す指標です。本研究では、チャンバー内で測定したメタン濃度の変化をもとに、mg CH4/m2/hの単位に換算して評価しました。

※7 移植期
育苗したイネの苗を水田に植え付ける時期です。作付け初期にあたり、その後の生育や土壌環境に影響を与える重要な時期です。

お問い合わせ先
株式会社リバネス
知識創業研究センター(注:実施当時は、農林水産研究センターにて実施)
担当:宮内
TEL:03-5227-4198
E-mail:[email protected]

環境大善株式会社
土、水、空気研究所
担当:草野
TEL:0157-67-6788
E-mail:otoiawase@kankyo-daizen.jp