サッカーで磨く連携プレー|松元 明弘

サッカーで磨く連携プレー|松元 明弘

東洋大学 理工学部 機械工学科 教授

広いフィールドをかけ回るサッカー選手たちは,一瞬の判断で見事な連携プレーを生み出します。近い将来,ロボットが社会で活躍をするためには,同じように「その場」で判断する必要があるのです。東洋大学の松元明弘さんは,「ロボカップ」を通して,ロボットが未来で活躍するための技術を追い続けています。

先を予測し,判断する

2050年までにワールドカップ優勝チームに勝利することを目指して,ロボットのサッカーチームをつくる国際プロジェクト「ロボカップ」が進められています。数あるスポーツの中で,なぜサッカーなのでしょうか。実は,変化する状況のなかで自ら判断をする技術である「自律制御」を磨くためにはサッカーのプレーがうってつけなのです。現在,松元さんは2つの課題に挑戦しています。ひとつ目は,味方の進む方向を予測してパスを出す「ワンツーパス」のようなプレーを実現することです。この「予測」が非常に難しいのです。2つ目は,お互いのロボットから発信する情報の通信時間を短縮することです。ロボットやボールの情報をすべて計算していては,試合についていけません。必要最低限の情報から最適な判断をしなくてはならないのです。これらの課題を克服するため,サッカー経験者を含めた研究室のメンバーで,数多くの連携パターンを編み出し,少ない情報でロボットの動きを決めるプログラムを開発しています。人間が感じる「勘」のようなものをロボットで再現するのが目標です。

苦難を乗り越えた先の感動

将来,ロボットが社会で活躍するためには,十字路でのすれ違いや,ものの受け渡しなど,相手の動きを予測して動くことが必要不可欠です。そのためには,多くの技術が連動しなければいけません。「実際に組み立ててみると,うまく動かないことがほとんどです。それを乗り越えてロボットが動いたときは本当に感動します」と松元さんは目を輝かせます。松元研究室のロボカップへの挑戦が,未来に活躍するロボットを生み出すかもしれません。(文・金井真澄)

松元 明弘(まつもと あきひろ)プロフィール:

東洋大学理工学部 機械工学科 教授。1983年東京大学大学院工学系研究科精密機械工学専攻修士課程修了。同年東京大学工学部助手,1988年東洋大学工学部講師を経て,2004年から現職。著作に『中型ロボットの基礎技術』『ロボットメカニクス』がある。