「ツルマメ」に見るダイズの未来|阿部 純

「ツルマメ」に見るダイズの未来|阿部 純

北海道大学 農学部 准教授

味噌やしょうゆなどの調味料から豆腐,煮豆まで,食卓に登場することの多いダイズ。「育種の研究をしている人は多いけれど,それを他の植物とのかかわりから見ている人はあまりいません」。阿部純さんは,淡々と,しかし自分の研究に対する自信をにじませ話し始めた。

近くにいる,ダイズの祖先種

ダイズには,使い道によって,豆のかたちや色など性質の異なる多くの栽培品種が存在する。その原種は,東アジアを起源とし,日本にも自生している「ツルマメ」だとされている。ひょろりと細いつるを伸ばし,その先には枝豆よりひとまわり小さな実をつける。この植物に大豆栽培の歴史が隠されているのだと,阿部さんは言う。

遺伝子に残る歴史

昔から,栽培されているダイズの花粉が,その近くに自生する野生のツルマメに受粉し,雑種をつくることもあった。ダイズは収穫されて食品や飼料に利用されるが,ツルマメはその場に残り,交雑で得られた種子を次の年へ残す。発芽してくるさまざまなかたちをした雑種個体の中から,再び人が選び,ダイズとして利用するようにもなる。長い歴史の中で,ツルマメから新たな遺伝子が取り込まれてさまざまなダイズ品種がかたち作られてきたのだ。阿部さんは,ツルマメの遺伝子を調べ,その遺伝子をダイズに組み込み新しい性質を持たせようと研究している。たとえば,ビタミンE含量の高いツルマメを見つけたら,それとダイズを交雑させることで,よりビタミンE含量の高いダイズ品種をつくり出せる可能性があるのだ。

日本中のツルマメ大集合

研究室では,全国各地のツルマメを集めてビニールハウスで栽培している。植木鉢の数は100個以上。しかし,「集めたツルマメの種子はだいたい1000種類くらいですね」。栽培されていたのはほんの一部にすぎなかったのだ。ここで育てられている1株1株に,まだ阿部さんも知らない遺伝子がそっとひそんでいる。阿部さんの研究から生まれる未来のダイズは,今後どんなかたちで私たちの前に姿を現すのだろう。(文・藤井暢之)

阿部 純(あべ じゅん)プロフィール:

1986年北海道大学大学院農学研究科博士課程修了。卒業後,助手,助教授を経て,2007年より現職。農学博士。