ひたむきに、自分の道を追い求める 蔡 凱
東京工業大学大学院総合理工学研究科 知能システム科学専攻 蔡凱(ツァイカイ)さん (掲載時、博士課程2年)
株式会社リバネスでは、2011年1月、国内外で研究する留学生を支援するリバネス研究費留学生賞の募集を行った。応募総数117件の中から選ばれたのは、学部時代を中国で過ごし、修士課程ではカナダへ留学、現在は東京工業大学の博士課程で分散制御理論の研究を行っている蔡凱(ツァイ・カイ)さんだ。留学生賞の獲得によって、彼は独自のアイデアの実現に向けて大きな一歩を踏み出した。
人との縁が日本留学のきっかけ
蔡さんは学部時代から国際交流に興味があり、日本で半年間交換留学を行っていた。日本文化の理解と、日本で研究を学ぶという目的のプログラムだったが、「半年では短すぎて、日本を充分理解することはできなかった」という。その後、カナダで制御工学の修士号を取得したが、博士課程への進学を考えたとき、また日本で研究したいという想いが湧いてきた。カナダで所属していた研究グループと現在所属先の教授の関係が深かったことが縁となり、2009年から東工大の博士課程に進むこととなった。
独自の研究を進めるために
外部資金を獲得日本で研究を始めた蔡さんだが、研究を進めるうちに、博士課程でのテーマの他に修士時代に手がけた研究も進めてみたい、と考えるようになった。蔡さんの専攻する制御工学は、機械を思い通りに動かす仕組みを作る分野だ。その中でも、複数の機械を思い通りに動かせるようにする「マルチエージェントシステム」で扱われる理論を数学的モデルにより構築する研究を行っている。現在制御工学の研究では、個々の制御対象である機械の動きを解析することで、全体に適した仕組みを導き出すアプローチが主流だ。しかし蔡さんが修士時代に手がけていたのは、全体に適した仕組みを考えることで個々のエージェントの動きを操作する従来と反対のアプローチ。「未開拓な分、新たな面白さが眠っていそうだ」。そんな想いが蔡さんを再び駆り立てた。だが、このテーマは研究室の方向性とは若干異なっており、学会発表時のサポートなどは受けられないかもしれない。そこで、独自に得られる助成金はないかと探しているところに、出会ったのが留学生賞のポスターだ。読めば、助成金50万円を自由な目的で使えるという。「この賞があれば、自分の力で海外の学会で発表できる」と、応募を決意し、見事獲得した。自らチャンスを作って独自のアイデアをかたちにするという行動力と熱意が生んだ結果だ。
自由な発想で研究を進めたい
博士課程修了後も自分のアイデアをどんどん試していくスタイルで研究を続けたいという想いから、大学で研究することを希望している。自分の研究室でプロジェクトを持つことができれば、独自のアイデアを存分に追求できる。また、学生と関わり様々な刺激を得ることで、一層研究のアイデアが膨らんでいく。この自由さや学生と刺激を与えあう環境が大学の魅力だ。自由な発想で研究をしたいという想いを胸に、情熱を燃やす蔡さん。留学生賞は若手研究者の純粋でひたむきな気持ちを後押ししている。(文 大久保貴之)