研究費獲得を自信につなげる
第6回リバネス研究費 リバネス賞 採択者 京都大学大学院 理学研究科 辻本 恵太 さん
研究をしていると、大学の研究室やいつも行く学会など限られた領域のメンバーに囲まれて活動することが多い。外側の世界から見たとき、自分は研究者としてどんな人間に映るのだろう。そんな疑問を抱いた辻本恵太さんは、修士1年の段階で、第三者から評価を受けることに挑戦した。その舞台として選んだのがリバネス研究費だった。
自己分析で強みを明らかに
「面白いテーマを考え、しっかりとした長期的プランを練る。そうやって研究した結果が業績につながるんだと思います。でも、修士1年では大きな成果なんてありません。だから研究対象も含めて相対的に自分の強みを分析することから始めました」。構想段階を含めておよそ1か月の間、ボスの科研費申請書類なども見せてもらいながら、研究を魅力的に魅せる方法、プロジェクト全体像の描き方を研究し、その中での自分の立ち位置をどのように示すべきなのかなど、分析を行った。
暗闇でハエが奏でる求愛歌
考えた結果、自らの強みとして選んだのは、研究対象となる「暗黒ショウジョウバエ」だった。京都大学行動学教室にて、約57年(約1400世代)の間、暗闇で維持され続けてきたてきた特殊なハエだ。行動学・遺伝学など様々な視点から野生型のハエとの比較を行う研究が進められている。辻本さんが取り組んでいるのは、聴覚と行動の関係性の解明だ。オスのハエは、片羽を震わせることで求愛歌を奏で、それによってメスは交尾受容性が高まる。暗黒バエの求愛歌に特徴的な性質は認められなかったが、求愛歌を聴いたハエの行動には違いが見られた。このような特徴的な行動と、遺伝子、環境を結びつけ、適応進化の分子レベルでの理解を目指している。
学生こそ、研究費に申請しよう
「良くも悪くも、しがらみのない学生のうちだからこそ、付加価値の部分に注目して、もっとアグレッシブに研究費の申請をするべきだと思うんです」。将来、研究者としての自立を目指すなら、仲間を集め、プロジェクトを推し進めるために、成果や研究費の獲得を意識する日が来るだろう。研究成果や、研究資金などに追われることなく、自分を高めることに時間を使える学生時代だからこそ、研究者としての将来性や可能性について客観的に評価を受けるチャンスを活用してみよう。成否を問わず、自分を見つめ直す良いきっかけになるはずだ。
(文 石澤 敏洋)