カッターと両面テープで空を飛ぶ|上智大学鳥人間サークル

カッターと両面テープで空を飛ぶ|上智大学鳥人間サークル

上智大学鳥人間サークル「SOPHIA FLYING TURKEYS」

滑空機は銀色に輝いていました。長さ20 m の翼を広げ,緊張感が張りつめる空気を無視するかのように,琵琶湖の上空を優雅に滑っていきます。次第に高度を下げ,水面近くをしばらく進んだあと小さな音をたてて着水。飛距離は314.41 m。2011 年,滑空機部門の優勝チームが決まりました。

スタートは翼の設計

1977 年から開催されている鳥人間コンテストでは,チームごとに人力飛行機を設計・製作し,その飛行速度と距離を競います。優勝した上智大学のSOPHIA FLYING TURKEYS が使用するのは,テーパー翼を用いた固定翼機。毎年使いまわす胴体部分と作り変える翼部分に分けられ,30万円しかない予算の中でどう工夫するかがポイントです。翼の設計では,ただやみくもに揚力を大きくすればよいわけではありません。揚力は空気抵抗と比例するため,バランスをとることが重要。これまで蓄積した実験データから,機体とほぼ同じ重量の揚力にすると,一番速く進むことがわかっています。
1mm も見逃すな

設計担当のメンバーが独学と先輩のアドバイスをもとに設計を行い,チームメンバー全員はカッターと両面テープを両手に機体を制作します。「大事なポイントは,精度をどれだけ上げるかです。そのためにはひとつひとつの細かい作業を慎重にやってきました」と,チーム代表の佐々木拓真さんは振り返ります。設計通りに切っても,ずれが生じるのがモノづくりの難しさ。アルミ製の骨組みを断熱材で覆った幅2m の翼を5 つに分けてつくり,蝶つがいで丁寧にくっつけて1 枚に仕上げていきます。テスト飛行はたった1 回。本番の着地場所は水上ですが,テスト飛行は陸上で行われるため,実際には飛ばさずに各メンバーの配置と動きを確認するのみ。パイロットはハンググライダーで練習を重ね,イメージトレーニングをします。こうして全員が脳内をひとつにして,本番当日を迎えるのです。
「高校生のときは計算と知識の世界でしたが,いまは自分たちで設計してモノをつくるのが楽しい」。知識や得意分野が違うメンバーが集まるのに,特別な道具はいりません。必要なのは,必ず飛ばしてみせるという熱いハートなのです。
(文・孟 芊芊)

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