世界を見つめる赤ちゃん 大藪 泰
モノマネタレントが有名モデルのマネをする。すると、そのマネをマネすることが流行ったりしますよね。
私たちは結構、日常的にマネをしますし、案外、マネすることを楽しんでいたりもします。この「マネをすること」って、実は人間の大きな特徴らしいのです。
マネは独創の根源!
大藪泰教授は、早稲田大学文学学術院 発達心理学研究室の先生です。
居室に入るとするとすぐに、デスクの上に置いてあるカラフルなおもちゃが見えます。
先生は赤ちゃんの前にそのおもちゃを置いて、一番上にあるボタンのようなものを、なんと額(ひたい)で押して見せるのだといいます。
赤ちゃんはそれを見て、同じように額で押してみるそうです。
手で押すように設計されているおもちゃですが、赤ちゃんは大藪先生のマネをして額で押してみることで、先生がどうして額で押したのか知ろうとしたのかもしれません。
ここに、大藪先生とおもちゃ、おもちゃと赤ちゃんの関係だけでなく、大藪先生と赤ちゃんという関係性、コミュニケーションが生まれているのです。
コミュニケーションをとること、これは人間の大きな特徴だといえます。
赤ちゃんはかなり早い段階からマネをし始めますが(新生児模倣というそうです)、次々とマネをすることこそが独自性を持つきっかけとなると先生は言います。
マネをする中で浮かぶ疑問に気づくことができれば、それを突き詰めると発見があり、独自のものになっていくからです。
発展途上の学問「赤ちゃん学」
大藪先生は、発達心理学や乳幼児心理学という分野の研究をしています。
でも赤ちゃんを研究することって大変です。なぜなら、大人と違って言葉で答えてくれないから。
ひたすら観察する必要があります。それに、大人であれば大学にたくさんいますが、研究対象である赤ちゃんを集めるのは大変な作業です。
赤ちゃん学は、20世紀の中頃になってようやく行われるようになったといいます。
赤ちゃんは産声を上げた後どのようにしているのかということさえ、あまり観察されていませんでした。
先生の研究によると、実際には平均80分も目覚めた覚醒状態が持続していたといいます。(ちなみにどうして産声を上げるんだと思いますか?人間の仲間である哺乳類の多くは産声を上げず、静かに生まれてくるそうです。これも不思議ですね。)人間を研究するその出発点である赤ちゃんに関する研究ですが、実はまだまだ発展途上の研究のようです。
赤ちゃんっておもしろい!
赤ちゃんを観察していると、いろいろおもしろい発見があるそうです。
例えば、目新しくて奇妙な感じがするおもちゃを見つけた場合にいきなり触るのではなく、まずお母さんの顔をうかがって、お母さんがにっこりとほほ笑んだら安心して触るといったことがあるといいます。
これは、初めての物で安全かどうかの情報を持っていないので、他者を使って安全かどうかの情報を確認しているとも受け取れますね。
なかなかどうして、賢いじゃありませんか。
赤ちゃんは言葉が話せなくてもとても豊かな情動があり、他者の心と共鳴し合うことができます。
逆に、体の動きを止め心を冷静にして、じっと何かを見つめていることもよくあります。
なぜ人間は他者と同じ世界を共有できるのか、そしていつから人間や物の世界を理解し、自分に気づくことができるのか、赤ちゃんの行動を観察することでこれらをうかがい知ることができるかもしれません。
赤ちゃんを研究することは、すなわち人間を研究すること。
赤ちゃんには研究のタネがたくさん詰まっているということを、今回のお話しで大藪先生に教えていただいてきました。
早稲田大学文学学術院 発達心理学研究室 大藪 泰
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