地球環境問題に取り組み続けて40年 近藤 豊

地球環境問題に取り組み続けて40年 近藤 豊

小中学校の時から理科は好きだった。吸い込まれるように大学に進学したという近藤先生。

教科書の中身は、過去の偉人の叡智の結晶。教科書というより、この昔の人達が作ってきた世界に惹かれたのだと思うと、自身を振り返る。

天文学をやりたかった

東京大学の天文に進むには、進振り点という進学振り分け時の点数が80点という難関。結果的には、天文学により近い地球物理に進学した。
当時の地球物理は、マントル対流、ロケット、人工衛星等スケールの大きなものがテーマになっていた時代。地球物理が発展する時期で夢があった。
大気の研究、それも宇宙に近いはるか上空についての研究をしよう。そうやって学生時代を過ごしたと言います。 

人に理解されない研究という時代を経て

学生時代が終わりに近づいた時に、親戚の集まりで自分の研究を話したことがある。研究の話をしても親戚は「ふぅん」という返答だ。この答えの中には「その研究がいったい何の役に立つのだ?」という感情が見えたのだという。 

転機は「就職」

学生を終え、大学のポストについた際に、近藤先生は自分を「変えた」。
今までは自分の好き勝手に研究をしてきたけれど、お金をもらいながら研究をする以上、人の役に立ちたい。そう考えるに至る。
人間の福祉・利益に叶うような分野を突き詰めよう。
その原点は今も変わらず、テーマの根幹は「地球環境問題」に決まった。 

不確定要素を失くすことからアプローチする

エアロゾル(aerosol)は大気中に浮遊する直径数nmから100 μm程度の微粒子です今の研究テーマの面白い部分はエアロゾルという微粒子の振る舞いだ。太陽光を吸収したり散乱したりするこの物質。その存在だけは以前から知られていたが、今はそれを如何にして定量化するのかという事が研究対象となっている。 

地球温暖化を語るにおいて、このエアロゾルは重要な研究対象となっているが、そもそものエアロゾルの存在量が定量化されていないという問題があった。
IPCC(気候変動に関する政府間パネル)という組織における気象変動予測でも不確定要因になっている大きな問題です。
これでは到底定量化など出来ないと思い立った近藤先生は、まずそのエアロゾルの何たるかを突き止めることに。

 「ブラックカーボン(すす)は一体どういうアニマルなのかを知りたい」

「黒い」エアロゾルによる太陽光の吸収

「黒い」エアロゾルによる太陽光の吸収

エアロゾルは、多くの化合物から構成されている。大気中の微粒子なので、なんとなく想像はつくだろう。この中には、光を散乱させ、地表に届く太陽光を減少させるために大気を冷却するような物質もあれば、光を吸収し大気を加熱するようなブラックカーボンと呼ばれる物質も存在しているのです。

このブラックカーボンに多角的に向き合うことで、これが何者なのかがわかってくる。昨今では測定を不安定にする原因がブラックカーボンにくっつく不純物だということもわかってきました。

世界のカオスを鎮めたかった

こうして近藤先生の研究は、研究のスタートラインにたとうとしている。地球温暖化予測。これだ。
研究分野において、わからないことはいくらでもあるというのは当たり前だが、何がわからないのか、そこを解決するというアプローチが大事だと近藤先生は言う。 

非常に高度な知識を要求する世界が現代のフロンティアだ

現代の問題解決には、高度な物理学や数学の知識が必要になってくる。地球環境という大きなテーマに向きあうときは特にそこが重要になるだろう。

「数学・物理・化学等の知識を総動員しなきゃならないけど、そこが面白いじゃないですか」。

研究者として、専門を突き詰めた先の世界を切り開く。生涯現役研究者として活躍する近藤先生は、今も勉強を続け、新しいアプローチを探求している。

近藤研究室 研究内容

10年後には絶対に世界は変わっている

新しいイノベーションがあり、新しい方向性が生まれる。日本にはこの新しい方向性を見出し、次の世界を切り開いていく人が求められている。
自らの研究を進化させること。そして、自分自身の進化を信じて研究・勉強を続けていくことの重要性を話してくれた近藤先生。

「60歳になってもギブアップなんてしないほうがいい」

生涯研究者の姿がここにあった。

近藤 豊先生からのメッセージはこちら

近藤 豊先生の本棚はこちら!

所蔵する書籍は殆ど家にあるということだったので、こちらは一部になりますが紹介。

近藤豊先生の本棚

研究者詳細

近藤豊 東京大学大学院理学系研究科地球惑星科学専攻教授近藤 豊
東京大学大学院理学系研究科地球惑星科学専攻
教授
理学博士

近藤研究室

温和に見える外見と年齢とは裏腹に、非常に熱いメッセージを持った先生でした。
もっと年上の先生が本を書くべきだ!を持論にしている先生。生涯勉強を続け、高みを目指しつつけ、その知性を世に還元する。そこまでをもっとやるべきだという熱いメッセージを貰いました。
洋書はあんなに厚い書籍が沢山あるのに日本語はないでしょう?という指摘には、確かにとうなずきました。
若い先生には、しっかりした本を書いている時間はない。
50を超えて、時間に余裕が出来た時、後進を育てていけるような物を残していけるように、もっと精進しなければならないという言葉は熱かった!(吉田丈治)