インダストリーあってのエンジニアリング 石井 勝
東京大学生産技術研究所
石井 勝教授
既に確立した物ばかり勉強しても面白く無い
「大学時代、自分が本当に何をやりたいかはわからなかった」という石井先生。工学部に行ったほうが、将来食うに困らないだろうと言う事で電気系へ進学する。
学部時代の理解では最先端で何が起こっているのかに触れることは出来なかった。授業で習うことはとっくの昔に確立した事ばかり。教科書をそのまま板書するような授業に飽き飽きしていた。
人が殺到するような事をやるのは嫌だった
今から思えば信じられない話だが、石井先生が学生時代に、東京大学の電気系では「エネルギー」分野は人気がなかったのだそうだ。
高度成長時代の後半、伸びていたSONY等の電機メーカーに行くのも嫌だった石井先生が選んだのは所謂強電系と言われる電力の世界だ。
高電圧から雷へ
石井先生は、研究者になってからずっと高電圧を研究対象としてきた。検討する中身は時代とともに変われども、基本的に高電圧に関わることが研究対象になる。「ずっと分野が変わらずにいる研究者も珍しいでしょ」という石井先生。
自分が面白いと思う対象にじっくりと向き合うことが出来たのはラッキーだったと振り返る。
送電線と雷の関係を解明せよ
送電線。特に高圧線は、山の中をどかーんと通っていたりする訳ですが、これは裸線なんですね。被覆なんてものは無いんです。そこを高電圧が走っている。危険じゃないの?というと、高圧線の周りを空気が囲っていることによって、絶縁体の役割を担わせている為、通常に運用されていれば危険はありません。
ただ、雷がこの高圧線に落ちる訳です。
自然の雷というものがそもそもどういう現象なのかがわかっていなかった日本。アメリカでは竜巻の発生数が多いため、研究はダントツに進んでいたという。(竜巻と雷の発生源は積乱雲で、同じもの)
こうした先進的な研究結果をどんどん取り入れ、石井先生は雷位置標定システムを研究に導入。日本に固有で頻発する「冬の雷」現象にのめり込んだ。
スカイツリーにも応用される技術
こうした雷の研究は、スカイツリーにも応用されている。
かつては、スカイツリーのような建造物は存在しなかった。昔だったら気にしなくてよかったものが、現代社会では検討しなくてはなくなっている。
雷対策のシミュレーションを行なってあり、万全に近いだろうと話す石井先生。
「スカイツリーオープン当日は生憎の天気だったが、二度は雷が落ちているはず。でもお客さんは気づいていませんよ」
日本の電力技術を世界へ
電力の世界は今日本が引っ張っている。これだけ安定した電力供給が可能だった国は珍しいのだ。
世界の電力品質を向上させたいという石井先生。
技術の発展を担保するには、工業が発展していくことは必須だ。工業が発展し、国民の関心が集まる分野の技術は伸びていく。
インダストリーあってのエンジニアリング
工業が元気にならないと、研究が元気にならない。
日本の技術力を、世界貢献に活用していく、日本はそんなフェーズにあると先生は話す。
IShii Lab.
石井勝先生からのメッセージ
石井先生の本棚を見せてもらいました!
かさばらなくて良いよね。と思う反面、パラパラめくって、思わぬ情報との出会いは確実に減っていると思うという感想をいただきました。
想定外の出会いを生み出す為のインターフェイスとしての電子書籍はまだまだのようです。
研究者が生み出すイノベーションに、こういったインフラが関わるのかどうかは興味があります。(吉田丈治)
スカイツリーで雷の観測がスタート 高さ世界一の自立式電波塔で雷の謎に迫る (科学雑誌Newton) – Yahoo!ニュース