海底にロボット共和国が出来る未来 浦 環(たまき)<後編>

海底にロボット共和国が出来る未来 浦 環(たまき)<後編>

前編では、浦先生の海洋ロボット学へたどり着くまでの話について聞いてみた。
後編では、浦先生の研究内容について迫っていく

海底の調査には自ら考えるロボットが必要

東京大学生産技術研究所海中工学研究センターセンター長 浦 環(うらたまき)教授浦先生の研究に登場するのは、自律式の海洋ロボットだ。
自律式、つまり海中に放されたロボットは、自ら判断して自分のミッションを遂行する。
何故そういうことをするかというと、海中のロボットをリモコンで操作するような形で設計すると、操作が難しいという問題が発生するのだ。 

有線でコントローラを繋げば、海中で複雑な移動が難しい。無線で操作するとなると音波で命令を伝える事になるのだが、現在の技術ではまだまだ信頼性の低いのだ。

どんな事があってもめげない、ミッションコンプリートするまで頑張ってくれる。そんな全自動ロボット。これが浦先生の研究によって生み出されるシロモノなのだ。

世界の99%の海は、見て回ることが出来る時代へ。しかし…

自律型海中ロボット 「ツナサンド」

自律型海中ロボット 「ツナサンド」

しんかい6500や中国のジャオロン(蛟竜号)、ロシアのミール、アメリカのアルビン。今や人類は深海7000mクラスまで人を潜らせることが出来る時代になっている。
しかし、これらは高価であり、世界でも台数に限りがある。
移動距離は0.5m/sec程度であり、一台の探査機が一生の間に見て回ることの出来る範囲は、せいぜい淡路島の大きさ程度だ(592.26km2)。
海の面積は3億6106km2であり、0.00016%にしかならない。
世界に6台しかない有人潜水調査艇で解き明かされる海の世界はわずかだ。 

一人一台の自律式海中ロボットの時代へ

あと20年もすれば、研究者一人が一台のロボットを持つ時代がやってくるだろうと言う。
調査船の数にも限りがある。実際に海に出るチャンスは多くはない為、それを最大限に活かす為の開発が続けられている。 

鉄腕アトムの世界が実現するのは海底

自律型ロボットが地上で活躍をし始めると、必ず人類と対立関係が発生してしまうと浦先生は言う。
「鉄腕アトムが活躍できるのは、人が行かないところだ」という浦先生。
自ら考え、自律式に発展するロボットの国が海底に実現し、鉱物資源を開発して人類と平和的に取引を行う。そんな未来がやってくるのではないかと未来を語った。