アイスプラントの塩味は生命力の証
アイスプラントは、ドレッシングを使っていないのに、ほんのりと塩味がする風変わりな野菜です。
その味の秘密は、肉厚な葉や茎にびっしりとついた直径2mmほどの小さなドーム。「ブラッダー細胞」と名付けられたこのドームの中には塩水が詰まっていて、宝石のようにキラキラと輝いて見えます。
個性あふれるこの野菜の生まれ故郷は、遠くアフリカの南西部に広がるナミブ砂漠です。
この地の年間降水量はわずか25mm程度しかなく、強い海風にのってやってくる濃霧からのわずかな水分が砂漠に棲すむ植物たちの生命線。
しかし、それも強い日差しで蒸発し、水に溶けていた塩分が土壌に蓄積されてしまいます。
多くの植物にとって、過剰なナトリウムは体内のミネラルバランスを壊し成長を阻害する存在。
ナミブ砂漠では、限られた水分量と高い塩分濃度の土壌に適応する術を身につけた植物だけが生存を許されるのです。
そんな厳しい環境で生まれたアイスプラントには、しゃれた外見に似合わず、海水と同じ塩分濃度の土壌でも育つことができるほどの耐塩性があります。
そのメカニズムは、体外から吸収した塩分濃度の高い水からナトリウムを分離してブラッダー細胞に溜ためておくというものです。
分離することで、吸収した水の塩分濃度が下がり、成長に必要な水が利用できます。
キラキラとした外見や特徴的な塩味は砂漠で生き抜くために身につけたもの。
厳しい環境で命をつないできた塩味の秘密に思いをめぐらせながら、キラキラと輝くアイスプラントを味わってみてはいかがでしょうか。