記憶を加速させろ!刷り込み学習における最大の謎を解明! 帝京大学 北海道大学

記憶を加速させろ!刷り込み学習における最大の謎を解明! 帝京大学 北海道大学

今回発見されたのは、鳥での結果なのだが、人にも共通する仕組みを理解する試金石になるかもしれない。

謎が解明されたのは、学習臨界期を伴うような学習に対する仕組み。この鳥で言うと刷り込み学習(インプリンティング)と呼ばれる、生まれた時に見た親の後をついていくという、あの行動のキーとなる原理を見つけました。

巣を持たないニワトリやカモなどの鳥類のヒナが、孵化直後に親を記憶して追いかける刷り込み学習(インプリンティング)はその典型的な例で、ノーベル医学生理学賞を受賞したコンラート・ローレンツによる研究が有名ですが、刷り込みに関する報告は、1872年のダグラス・スポルディングによるものまで遡るといわれています。
以来、行動学的、心理学的、生化学的な多くの考察がなされてきましたが、およそ140年の間、刷り込みの臨界期の分子機構、特に臨界期を決定する因子の存在については明らかにされていませんでした。

謎だったんですね。

どんなメカニズムだったのか?

こんな流れになっているみたいです。

臨界期をとおる事で、記憶に深く刻み込まれ、刷り込み学習が成立する。そのキーを握っているのが「脳内甲状腺ホルモン」だそうです。

刷り込みが成立するためには、学習を開始すると同時に甲状腺ホルモンが急速に脳内へ流入し、臨界期の扉を開く生化学反応を引き起こすことが必要なことを明らかにしたのです。この反応は急速で、わずか20~30分間の生化学反応で学習臨界期を開始させるのに充分なものでした。

しかも凄い発見なのはこれです

臨界期を過ぎ、学習させてももはや刷り込みが成立しなくなった鳥であっても、人為的に甲状腺ホルモンを注射することで刷り込みが可能となることも示しました。さらに刷り込みには、その後の学習を効率よく習得できるようにプライミングする機能(学習の点火薬としての機能)があることもわかりました。驚くべきことにこのプライミング能力は、刷り込み学習をさせなくても、甲状腺ホルモンを一過的に与えるだけで獲得できました。つまり、刷り込み学習は、これまで考えられていたような特殊な学習ではなく、動物が生まれてからあとに学習を積み重ねていくための能力を与えるという重要な役割があったのです。

これってもしかして…人にも同様の仕組みが明らかになれば、学習効率を爆発的にあげることが出来るようになるのでは!?

臨界期を有する学習では、ヒトにおいても、言語の習得、絶対音感、社会性やストレスへの適切な対応能力の獲得など、幼若期で習得することが不可欠な学習が存在します。今回の研究成果は、臨界期の分子基盤を明らかにするとともに、学習の臨界期を逃しても再び臨界期を人為的にもたらすことが可能であることを示しました。

言語学習なんて、これだけ苦労してるんだから、科学的に乗り越えちゃおうよっていうアプローチは物凄く期待されますね。

学習を先延ばしにしてもあらかじめプライミングしておくことによって、いつでもその後の習得を保証するような薬の開発など、これまでにない新しい研究アプローチを開拓する端緒となることが期待されます。

プライミングとは「点火薬、起爆薬のこと。ここでは、脳が甲状腺ホルモンによって、学習能力を獲得するときのホルモンの作用を指す。論文中で著者らは、刷り込み学習が親を記憶することに基づく学習であることから、メモリープライミング(MP, memory priming)と命名している。」

うぅぅ…これ、皆待ち望んでますよ!!!

用語説明

★刷り込み:
生後間もないカモやニワトリのヒナが、親を記憶して追従する行動のこと。社会一般では刷り込みが定着しているが、心理学では刻印付けが通常の用語として用いられる。動物の発達初期の学習のひとつであり、親からの保護を確実に得るための学習であることから、親子間の刷り込み(filial imprinting)と呼ばれる。学習臨界期(critical period)または学習感受性期(sensitive period)と呼ばれる時期が存在し、習得可能な時期が特定の発達段階に限定されている。刷り込みによる学習が一度成立すると、忘れにくい強い記憶となって定着する。親子間の刷り込みの対象は、おもちゃなどの人工物でも成立することから、学習や学習臨界期のメカニズムの研究にも利用される。鳥類では、成長後に好みの異性を獲得するために必要な学習と考えられる性的刷り込み(sexual imprinting)が見られるほか、ヒトの乳児が母乳の匂いを記憶したり、サケなどの魚類が、育った川を記憶して、成長後にもどる母川回帰なども刷り込みに含められる場合がある。

★学習臨界期:
ある学習の習得可能な時期が特定の発達段階に限定されている場合、その時期のことを学習臨界期(critical period)または学習感受性期(sensitive period)とよぶ。生後間もないカモやニワトリなど離巣性の鳥類のヒナが、親を記憶して追従する刷り込み(filial imprinting)の場合、孵化後2,3日間が学習臨界期となる。また、成長後に好みの異性を獲得するために必要な学習と考えられる性的刷り込み(sexual imprinting)では、羽衣の時期(4~6週齢)が学習臨界期となる。このように、学習によって臨界期の時期や期間が異なる。鳥類でも就巣性のキンカチョウなどに見られる歌学習、ヒトにおける言語の習得にも学習臨界期が存在する。一般に学習臨界期を過ぎるとその学習の習得ができなくなることから、特定の発達段階と結びつく生理的な意義があると考えられる。

★甲状腺ホルモン:
甲状腺で合成、分泌されるホルモン。チロキシン(T4)とトリヨードチロニン(T3)の2種類がある。T3の活性の方がT4より数倍高い。血中にはT4が多く体内を循環しており、標的臓器に到達すると取り込まれてT3となる。生理作用として動物の基礎代謝を維持する作用が知られている。慢性的に甲状腺ホルモン量が亢進することが原因となる疾患としてバセドウ病が、欠如することが原因となる疾患として橋本病が知られている。本研究のように短時間で臓器に作用する作用は、非遺伝子的作用(nongenomic action)として最近報告されるようになってきている。

今回の発見は!

帝京大学薬学部の本間光一教授、山口真二准教授、青木直哉助教、片桐幸子助教、北海道大学大学院理学研究院の松島俊也教授らの研究グループ