発生生物学の常識を覆した 2人の研究者にノーベル生理学医学賞!
学校で飼っているトカゲのしっぽを掴んだら、プチッと切れた!一年後、観察すると驚いたことにしっぽが再生している。なんて話を聞いたことありますよね。
人間も悪くなった体の一部を簡単に再生できれば…そんな夢のような研究が進み、2012年10月8日、京都大学の山中伸弥氏とケンブリッジ大学のJohn B. Gurdon氏がノーベル生理学医学賞を受賞しました。
私達の体は約60兆個の細胞から出来ています。
受精卵は1つの細胞ですが、分裂し、成長するに従い、それぞれの細胞が「皮膚」「心臓」といった働きをもつようになります(分化)。
それぞれの細胞の核の中には同じ生命の設計図=DNAが入っています。
DNAには体を作るためのたくさんの情報(遺伝子)が含まれており、使われる情報が異なると分化する細胞も異なります。
1950年代当時、例えば「皮膚の細胞の核からは、皮膚の細胞しか作られない」というように、「細胞の分化は核によって引き起こされ、一度分化した細胞は未分化の状態には戻れない」と考えられていました。
Gurdon氏はこの説に疑問をもち、核を取り出したカエルの受精卵に、既に分化したオタマジャクシの体細胞の核を入れる実験を行いました。
すると、一度分化した体細胞の核から、なんと再び発生が始まり、大人のカエルまで成長してしまうという結果が得られました。
つまり、分化してしまった核でも細胞を元の未分化の状態に戻ることがわかりました。
発生生物工学の常識が覆ったことで、飛躍的な研究の進歩につながったのです。
この発見から44年後、山中氏は未分化の状態に戻すことができる4つの遺伝子(山中ファクター)を見つけだし、iPS細胞を開発しました。
運命的なことに、Gurdon氏がカエルの核移植実験に成功した年に、山中氏が誕生しました。
研究や技術は積み重ねの上に成り立っています。
みんなも将来、教科書に載る研究者と世界を変える日が来るかもしれませんね!
稲本晶子
SFやファンタジーでしかなかった想像が、現実に近づいてくるのを実感します。想像から未来が生まれるならば、どんどん大きな夢を持ちましょう!