シマフクロウを守るICT技術

シマフクロウを守るICT技術
Brown Fish-Owl  (Ketupa zeylonensis)Brown Fish-Owl (Ketupa zeylonensis) / Lip Kee

「○○くんに電話」スマートフォンに話しかけると、電話がつながりました。

このような音声認識技術の活用が、スマートフォンをはじめとする様々な機器で大変注目されています。
しかも、この技術は話の内容だけではなく、誰が話したかについても判別することができます。
つい最近、この機能を、シマフクロウの種の保全に役立てる動きがでてきました。

シマフクロウは、近い将来に絶滅の可能性が最も高い分類、絶滅危惧種IA種に指定されています。
現在、日本での生息は北海道の中部と東部合わせて140羽程度しか確認されていません。
生息数の変化を調べることは種の保全に重要です。
これまでの調査では、森でシマフクロウの鳴き声を録音し、その後調査員が耳で鳴き声を聞き分けて個体識別を行い、個体数を調べていました。
しかし、これには音声録音できる距離に限りがある点、調査員の労力が膨大になる点が課題となっていました。

音は空気を振動させ、波のように伝わっていきます。
この波の形は、音の種類により変わるので個体により鳴き声の波の形が異なります。
また、シマフクロウはオスとメスがつがいになって夕方から夜にかけて同じ場所で鳴き続ける習性があります。
これらに着目し、これまでの音声認識技術を応用して、オスの鳴き声を解析し、波形のデジタルデータとして扱う方法を富士通株式会社が開発しました。
この結果、自動で鳴き声による個体識別をすることが可能となり、調査員が1時間かけていた作業が数分で終わるだけではなく、より多くの音声をより正確に抽出できるようになりました。
他の科学技術の発展と同様に、1960年代頃から始まった音声認識機能の技術開発は、人の生活を豊かにするためでした。
しかし今では、人以外の生物種の保存を進めるための技術へと広がってきています。

一つの技術がいろいろな役立ち方をするという例は、実生活でも他にも沢山あるのかもしれません。

シマフクロウの生息域調査のイメージ

シマフクロウの生息域調査のイメージ


シマフクロウの音声を自動認識するプログラムの表示画面

シマフクロウの音声を自動認識するプログラムの表示画面

参考:富士通 ICTを活用し北海道東部のシマフクロウ生息域調査を支援(画像はこちらのページより)

http://pr.fujitsu.com/jp/news/2012/10/15-1.html