ロボットの動作するしくみを生み出す 小澤 隆太

ロボットの動作するしくみを生み出す 小澤 隆太

私たちが指を動かすと、必ず第1関節と一緒に第2関節が連動して曲がります。
指先につながっている腱によって起こるこのしくみは、ものを掴むうえでとても有効に働いています。
小澤先生は指の動きを再現するロボットをつくることで、そこに隠れるロボットの動作するしくみを模索しています。

腱の動きをワイヤで再現

立命館大学理工学部 ロボティクス学科 小澤 隆太 准教授

立命館大学理工学部 ロボティクス学科 小澤 隆太 准教授

先生がつくったロボットは、アームとプーリー、そしてワイヤを組み合わせることで、指の動きを再現することができるというもの。
アームが指、プーリーが関節、そしてワイヤが腱に対応します。
2つのプーリーがそれぞれ第1関節、第2関節に取り付けられ、3つのアームの間に挟まれています。
この状態でアームを押すと、第1関節と第2関節はどちらの方向にも自由に曲がります。
ところが、プーリーの間にワイヤを張ることによって、曲がる方向や動きに拘束を与え、指のように決まった方向へ連動した動きを持たせることができます。 実際に私たちの指が動くのも、弾力のある腱が動きを調整しているから。
先生はアームとプーリーとワイヤを使ったロボットから指の動きを数式化し、実際の動きと比較することで、ワイヤを使った動作の一般式を導き出しました。
関節の数や配置、連動してどの方向に動かしたいかを決めると、この一般式からどのようなワイヤの張り方をすればよいかを導き出すことができます。
これにより、さまざまな関節を持つロボットの動作制御をすることができるようになったのです。

運動制御のためのロボット製作

ロボティクスという分野は制御工学、情報工学、機械工学などさまざまな分野の人が集まって研究を進めている分野です。
ロボティクス分野の研究者の多くは、人間のように動いたり、工場で製品を組み立てたり、具体的な目的を実現するロボットをつくり上げるための研究を行っています。
その一方で、「腕を動かす」や「2本の足で歩く」など、ロボットの種類に関わらず利用できる、共通した理論を考える研究もあります。
先生の研究は後者。
ロボット製作を通じて、より一般的な運動制御理論を模索しています。

体系化への興味

先生が研究者になろうと思ったきっかけは、ロボティクス分野は体系化できないという話をいろいろな研究者から聞いたからでした。
一言にロボットと言っても、さまざまな種類があります。
「それぞれに適用できる方法は数多くありますが、ロボット全体で共通するものとなると、ほとんど確立されてはいません。だからこそ、ロボティクスの体系化に関わる仕事をしたいと思い、博士課程の時に研究者の道に進むことを決めました」。 ロボットの動きに共通する理論を確立したとき、私たちの世界にはいったいどんなロボットが生まれるのでしょう。

立命館大学理工学部 ロボティクス学科 小澤 隆太 准教授