ワクワクする乗り物でカッコいい生き方を作ろう

ワクワクする乗り物でカッコいい生き方を作ろう

スポーツカー、バイクや自転車などの乗り物には、移動手段としての役割だけでなく、乗る人をワクワクさせ、もっと外に出かけたくなるような気持ちをつくる側面もある。
しかし、車椅子は違っていた。「100m先のコンビニに行くのも諦めてしまう」という車椅子ユーザーの声をきっかけに、「カッコよく乗れるパーソナルモビリティ」を作るべくエンジニアたちが動いた。

操作性とデザインがワクワクを生む

WHILL株式会社が開発しているパーソナルモビリティWHILLType-Aは、全く新しい操作性の乗り物だ。前方にかかるアーチ型のハンドルを行きたい方向に傾けるだけで、運転することができる。また、前輪に前後左右に自由に動く全方位タイヤを使用し、タイヤを構成する 個のローラーが左右方向に回転することで、前後進するだけでなく、その場で回転することもできる。目指したのは、カッコ良く、出かけるのが楽しくなる車椅子。道路交通法に準拠し、公道での走行も可能な設計にしている。2012年月に先行予約を開始、来年から発売予定だ。ゆくゆくは、既存の車椅子に取り付けるだけで同等の操作が可能になる機種やオプション装備も含め、「毎年なにか1つずつ新しいものをリリースしたい」と開発者の内藤さんは話す。

自分が生み出したモノを世に出したい

WHILL Type-A
内藤さんをはじめ、創業メンバーの多くは、同じ名古屋大学工学部の友人同士だ。卒業後、それぞれ大手メーカーなどに入社し、エンジニアとして働いた。「30歳までに、全く新しく、おもしろいものを作りたいと考えていました。でも自分の提案が悪かったのか、環境が良くなかったのか、勤めていた企業の中でそれをやるのは難しかった」。他の仲間も似た想いを持ち、自由なモノづくりをしようと再集結。「SunnySideGarage」という団体を結成し、LEDや加速度センサーを使った光のアートなどを発表してきた。徐々に友人のつてで仲間を増やしながら、自己資金で活動を続ける中、いつしか車椅子に注目し始めた。
「これをカッコよくしよう。そうすれば、社会にもいいことがあるんじゃないか」。
現在WHILLの代表であるデザイナーの杉江さんとともに、WHILLType-Aの前身となる車いす電動化装置WHILLconceptの開発が始まった。

想いに後押しされ、前へ進む

パーソナルモビリティWHILLconceptのデザインが決まったのが2011年月。そこから怒涛の日々が続いた。2011年月に開催された東京モーターショーに向けて、平日の夜に設計し、土日に組み立てては崩して設計し直す。基板は自作し、モーターは中国から、バッテリーはアメリカから通販で調達。10月にはクラウドファンディングを利用し、100万円を超える寄付金を集めた。ショー直前にようやく実際に動くものが出来た。全世界に向けてリリースしたことで、様々な反響がきたという。「車椅子は、足が不自由な人にとっては生活に必須のもの。強い思い入れを持つ人が多かったんです」。絶対に製品化して欲しい。ユーザーや家族の想いを胸に、内藤さんたちは人生をかけることを決意。それぞれが勤めていた企業を退社し、2012年月にWHILL株式会社を立ち上げた。

車椅子市場は成長を続けており、2020年には日本・アメリカ・イギリスのか国だけでも7000億円を超える規模になると言われている。そこにニーズがあり、自分たちに技術と想いがあるならば、社会にインパクトを与えるモノづくりができるのだ。大手メーカーを飛び出したエンジニアたちの挑戦から目が離せない。
車いすユーザーから始まる、パーソナルモビリティ。- WHILL