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地道に、着実に未来へつながる道 大森 隆夫

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大森 隆夫 おおもり たかお 東京工業大学大学院機械物理工学専攻修 士課程修了後、石川島播磨重工業(株)(現・ (株)IHI)に勤務。2002 年より同社技術 研修所長。1985 年から 2 年間、アメリカ のフェルミ国立加速研究所のプロジェク トに参加。2007 年より現職。博士(工学)。
大森 隆夫 おおもり たかお 東京工業大学大学院機械物理工学専攻修 士課程修了後、石川島播磨重工業(株)(現・ (株)IHI)に勤務。2002 年より同社技術 研修所長。1985 年から 2 年間、アメリカ のフェルミ国立加速研究所のプロジェク トに参加。2007 年より現職。博士(工学)。

同じ本を何度も読んで、書き込んで、また読んで。
高校時代から、本や教科書を読み込むことで物理的なセンスを養ってきた。
それが現在の研究へ、そして産業への応用へとつながっていく。 

熱を絶って保冷する

大森 隆夫 おおもり たかお 東京工業大学大学院機械物理工学専攻修 士課程修了後、石川島播磨重工業(株)(現・ (株)IHI)に勤務。2002 年より同社技術 研修所長。1985 年から 2 年間、アメリカ のフェルミ国立加速研究所のプロジェク トに参加。2007 年より現職。博士(工学)。
大森 隆夫 おおもり たかお
東京工業大学大学院機械物理工学専攻修
士課程修了後、石川島播磨重工業(株)(現・ (株)IHI)に勤務。2002 年より同社技術 研修所長。1985 年から 2 年間、アメリカ のフェルミ国立加速研究所のプロジェク
トに参加。2007 年より現職。博士(工学)。

夏の遠足や部活のときに麦茶やスポーツドリンクを冷たいままに保ってくれる、保冷水筒のしくみを知っているだろうか。
ガラス製の筒が二重になっており、熱を伝わりにくくするためにそのガラス管どうしの間は真空になっている。
ガラス管の真空側の面にはアルミニウムか銀を蒸着してあって、鏡のようにピカピカ光っている。
その面が熱を反射することで、水筒に入れた液体の温度をそのままに保つことができるのだ。 

大森先生は、-200°Cから-270°Cというレベルで保冷をする「極低温断熱」の研究を行っている。
たとえば、少しずつ実用化され始めている水素エネルギーで走る自動車の水素タンク。
水素は常温では気体なので、高圧でボンベに詰めたとしても大量には運べない。
しかし、水素を液体に保てる-250°Cに保冷できれば大量に自動車に積むことができるのだ。
保冷水筒のガラス管は2層だが、もっと層の数を増やして熱を反射させる「真空多層断熱」のしくみについて研究を進めている。 

地道に重ねて

液体水素のタンクには、球形のものがよく使われる。
保冷水筒と同じように液体水素タンクの外側は真空なので、タンクは1気圧で外側へ向かってふくらもうとする。
このため、タンクは球形が最も安全なのだ。
この周りに、薄い断熱材のフィルムを50層程度巻き付けてある。
フィルムは、ペットボトルの素材と同じポリエチレンテレフタレートにアルミを真空蒸着してつくったものだ。
重要なのは、巻き付けたフィルムが触れ合っている部分。
直接熱が伝わってしまうので、断熱効果が下がってしまう。
とはいえ、フィルム自身の重さにより、重力で下のフィルムに触れてしまうのはしかたがない。
また、球形にはフィルムはなじまず、たるんだりしわが入ったりして、すき間から熱が出入りしてしまう。 

そこで大森先生が取り出したのは、正五角形と正六角形がびっしり並んだ半球形の金属。
大きなサッカーボールを連想させる。
「フラーレンという多面体で、この正五角形と正六角形に合わせて断熱フィルムを切って、それを層にして束ねたものをつないで貼り付けます」。
つくりたい球体の大きさが決まったら、学生がそれに合うフラーレンの正多面体の大きさをすぐに計算し、フィルムをつくっていく。
でき上がったらタンクの中に液体窒素を入れ、蒸発してくる液体窒素の量から断熱効果を測定する。
フィルムどうしが触れないようにするためには少し大きめにする必要があるが、あまり大きいとフィルムの層が大きくなってタンク自体も大きくなってしまう。
くり返し試して最適値を探す、地道な作業だ。
「やっていることはかなり地味だけれど、着実に現象を見ながら断熱技術を磨いていく必要はあるよ、と学生に言っています」。
今世紀、私たちが使うエネルギー源は大きく変化する。
それに役立つには地道でも自主的に取り組まなければいけない。 

文章で表現することは大事

もともと物理は好きだったという大森先生。
見せてくれた学生時代の教科書には、たくさんのアンダーラインと書き込みがあった。
「その先がどういうふうに展開するのかが自分でわかるようになるまで、何度も読みました」。
流体について書かれている部分は、今でもよく読むという。 

高校生のときも、本をよく読んでいた。
「これは、僕らが高校生の頃にあった『サイエンススタディーシリーズ』というアメリカの本。
米ソ冷戦の時代、科学技術で後れを取ったら国が負けちゃうっていうので、アメリカはこういう読み物を用意して国内の科学教育を推進していたわけです」。
旧ソ連も科学振興のためのサイエンスシリーズを出しており、両国とも、文章で科学的な内容を解説した本がシリーズで出されているのが特徴だ。
イラストに頼らず文章で原理を理解させようという国の考え方が見える。 

「文章に書いて初めてわかることが多い」と、学生にも文章化することをすすめている。
何の目的でこの計算をしたのか、何のためにそのプログラムをつくっているのか。
そして何がわかったのか。
何がまだわからない点なのか。
できるだけ文章化していくと、蓄積ができてくる。
すると、問題点や足りないものが見えてきて、新しいアイデアが生まれたり、これからどんな研究をやったらいいのかが見えてきたりする。
「文章化というのは、ちょうどこういうことなのかな。
前方からやって来る課題を文章化してどんどん過去に押し出していかなければ、未来に行くことはできないよ」。

大森先生と学生は、着実に未来へ進んでいるのだろう。 

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