ロボットが日本の農業を救う?! 玉城 勝彦

ロボットが日本の農業を救う?! 玉城 勝彦

よく晴れた秋空の下、軽トラックが伴走している農業機械があります。運転席を見ると……、人が乗っていません!これが、自律自走型の農作業ロボット、コンバインロボットです。彼らは、これからの日本の農業の行方を左右する、大事なカギを握っています。

日本農業は危機に貧している

取材協力:
(独)農業・食品産業技術総合研究機構
中央農業総合研究センター 作業技術研究領域 農作業ロボット体系プロジェクト 玉城 勝彦さん

取材協力:
(独)農業・食品産業技術総合研究機構
中央農業総合研究センター 作業技術研究領域 農作業ロボット体系プロジェクト 玉城 勝彦さん

普通の会社に勤めていると、60~65歳くらいで定年退職する場合がほとんどです。
しかし、農業の場合は少し様子が違います。農業を普段の主な仕事にしている「基幹的農業従事者」の平均年齢は、なんと65.9歳。
さらに、兼業農家も含む「農業就業者」は、過去5年間で75万人も減っています。
一方で地域の農業の核となっているのは「担い手」と呼ばれる人たち。歳を取ってリタイヤする人が持っていた田んぼや畑を、担い手たちが受け継いでいます。
彼らの経営規模は、最近急激に大きくなってきています。
彼らの持つ農地は、合計面積は広いのですが、あちらこちらに点在しているため管理が大変。
人手不足は変わらず危機的な状況なのです。
同じ大規模経営でも、アメリカやヨーロッパは1枚の田んぼや畑が広く、農業機械も大型でスピードが出るものを使っています。
日本では、それらを使うことはできません。
現在日本で普及している農業機械は、日本の田畑に合ったものなのです。
「では、今ある農業機械をひとりで同時に複数台動かすことができれば、作業効率が上がるのではないでしょうか」と話すのは、中央農業総合研究センターの玉城勝彦さん。
農業機械をロボット化することによって、農業を仕事にしている人の数が年々減少している分、点在する田畑で効率よく食糧生産を行わなければならないという課題を、解消しようと考えています。

農業機械プラスアルファでロボットになる

田植えロボット 6 号機。 アーチの上にあるのが
「RTK-GPS」のアンテナで, 高い精度で自分の位置を
知ることができる。

田植えロボット 6 号機。 アーチの上にあるのが
「RTK-GPS」のアンテナで, 高い精度で自分の位置を
知ることができる。

トラクタ、田植え機など、すでにほとんどの農家で、人が乗って動かすタイプの農業機械が使われています。
これらの機械に開発した装置を載せ、自律走行と自動での農作業を実現させます。
カギとなるのは、精度の高い「RTK-GPS」。位置を知りたい農作業ロボットを基地局とし、位置のわかっている基地局との間で情報をやりとりして正確な位置を知る方法で、プラスマイナス2cmという高精度なうえ、ほぼリアルタイムで「どこにいるのか」という情報を得ることができます。
これに、「どちらを向いているのか」がわかる姿勢センサーの情報を組み合わせ、「田んぼの中をどうやって走るかという指示が、あらかじめコンピュータに入れてあります。そのあらかじめ与えられた経路と今いる位置を判断して、ハンドルや走る速さを操作します」。
トラクタ、田植え機、コンバインのセットをすでに持っている農家が、さらに自動化されたロボットの3台セットを一式、導入すれば、作業能率がほぼ2倍になる計算です。
たとえば、日本の標準サイズである100m×30m、30アールの田んぼでは、田植えロボットは人が田植え機に乗って作業するのと同じ1時間弱で作業を終えることができます。
そのあいだ、人は違う仕事ができるのです。

人とロボットの協力体制

現在、開発中の田植えロボットは6号機。彼らが量産され、日本中の農家さんが使えるようになるには、安全性という大きな壁をクリアしなければなりません。
「今までは、人が見ていなくても、田んぼの外に出たら勝手に止まるような装置をつくろうとしていました」と言う玉城さんは今、これまでと違う視点で彼らを見つめています。
「人も一緒にやる、というふうに考え方を変えるのです」。
農作業ロボットが作業している後ろを人が乗った農業機械で作業しながら付いていけば、ロボットを監視しながらも、作業は2倍の効率で進みます。
これなら、安全性のハードルがぐっと低くなるのでは、と玉城さんは期待を寄せます。
「ロボット自体の開発から一歩進んで、それをいかにうまく動かすか、というところに頭を捻るのです」。
ロボットが実用化されたとき、日本の農業の課題は、きっと改善の方向に進み始めるでしょう。

Pocket
LINEで送る