うちのこ紹介します「落葉樹 ポプラ」
研究者が,研究対象として扱っている生き物を紹介します。毎日向き合っている からこそ知っている,その生き物のおもしろさや魅力をつづっていきます。
街路樹として有名なポプラ。
その立ち姿は雄大で、ときには高さ30m、直径1.5mに達するものもあるほど。
落葉広葉樹であるポプラは、秋になって日が短くなったり冬になって気温が低くなったりしたのを感じると、休眠芽をつくって、葉を落とし、春の訪れをじっと待ちます。
そして春、日が長くなって気温が上がると一気に芽吹き始めるのです。
環境に合わせてさまざまな変化をするポプラですが、これは私たちの目に見える部分の話。
土の中にかくれている根は、四季の変化の中でどのような生活をしているのでしょうか。 根は、植物が生きていくための栄養分や水分を取り込む大事な器官。
年間通して、どのような変化があるのかを調べるために、樹木で初めてゲノム解読されたポプラの幹の中を流れる樹液(導管液)中に含まれている成分が調べられました。
すると、地上部は成長が止まっていて特に栄養分が必要でなさそうな冬の樹液に、糖やタンパク質が最も多く含まれていたのです。
タンパク質は冬の寒さによる凍結から細胞を守るために、糖は春の芽吹きに必要な栄養として使うために溜ため込まれているのでは、と考えられています。
私たちには見えていませんが、春を迎えるために、根は冬の間も一生懸命働いているのですね。 とはいっても、まだまだわからないことがたくさんある根の働き。
筑波大学内の実験室では高さ15cmほどのプラスチックポットに植えられたポプラが、人工的に温度、日長を制御してつくられた四季の中ですくすく育ち、研究に使われています。
小さくても休眠したり、芽吹いたり。
環境変化への敏感さによってコロコロと四季折々の違う表情を見せる、そんな健気な姿がかわいらしいのです。(文・住吉美奈子)
協力:筑波大学生命環境系教授佐藤忍さん