都市設計の分岐点に道しるべを 小川圭一

都市設計の分岐点に道しるべを 小川圭一

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理工学部 都市システム工学科 小川圭一 准教授

小型自動車のブームにも見られるように,短距離の移動でも自動車を使うことが増えています。実際,私たちが移動手段として最初に頭に浮かべるのは自動車ではないでしょうか。しかし,環境への配慮や健康のため,最近,移動手段としての自転車に注目が集まっています。

小川先生

自動車から自転車へのシフトチェンジ

自動車の普及率が増えるとともに,都市部の渋滞や排気ガスによる環境問題などの課題が出ています。さらに,健康増進といった観点もあり,自転車の利用を促進しようという声が大きくなっています。けれど,単にエコや健康のために自転車を使おうというかけ声だけでは人々の生活にはなかなか広がりません。移動時間の短縮や安全性,運転のしやすさなどの直接的なメリットを実現することが重要になります。また,歩行者と自転車の間での安全対策など,利用者が増えることで新たに起こる課題も想定した研究が必要になります。

守りやすいルールを探す

歩道の自転車通行空間も,そんな自転車利用面での研究課題です。小川先生は,道幅や自転車・歩行者の交通量,分離のしかたによって,交通分離がどのくらい守られるか(遵守率)を実際に調査しました。対象としたのは,柵や植木などで物理的に区切られた道や路面標示,標識が設置された道,まったく分離されていない道など14か所のさまざまな場所です。
調査の結果から,柵などで物理的に分離した道での遵守率が79%以上あるのに対し,路面標示と標識のみで分離している道は69%。また,歩行者に比べ自転車の交通量が大きくなるほど,遵守率が高くなることがわかりました。「人によって,どの道を選び,どんな運転をするかなど,思考はそれぞれです」。だからこそ,こうした調査を繰り返し,自転車・歩行者の行動特性と通行空間の利用されやすさの間にある相関を探しています。

それぞれの街に合ったつくり方

「今の街は人口が増えることを前提に計画されてきました。これから人口は減少に向かい,高齢化が進んでいきます。それを考慮した街に変えていく時期に来たのです」。都心部のビジネス街と郊外にある住宅街とでは,歩行者や車の数,道の大きさや生活スタイルがまったく違います。その街の人が自転車を車の代<か>わりに使うのか,それとも歩く代わりに使うのかによっても自転車通行空間のつくり方は変わります。さまざまな街の交通事情を詳細に調べ,人々の行動特性を知ることが,今ある都市交通を時代に合った形に変える道しるべになるのです。