抗体の性能を最大限に引き出す 渾身のプロトコール
感度の不足、非特異的な結合による高いバックグラウンドなどによって、目的のバンドが確認できない、明瞭な多重染色の結果が得られない。こうしたことは、新規の抗体を使った実験で一度は経験したことがあるのではないだろうか。市販抗体を牽引するメーカーのひとつであるCell Signaling Technology(以下、CST)は、開発の段階からこの問題と向き合って製品を世に送り出す。そこには、当たり前だが使ってみるとなるほどという納得感がある。
使うところまで考えた製品設計
大手の抗体サプライヤーの取り扱う抗体数が数万ということが当たり前になっている今、各メーカーはウェブサイトで製品が活用された文献や実験データを公開するなどして、ユーザーへのヒントを増やしている。
実験データや文献情報は抗体がワークするかどうかという購入の際の最初のハードルを越えさせてくれる。一方で、どうしたら同じ結果が得られるかという情報は必ずしも一緒にあるとは限らない。目的の抗体を「どう使うことが最適か」という視点に立って設計されているのがCSTの抗体だ。その特徴は当たり前でシンプルではあるが、推奨プロトコールを設けている点だ。そして、そのプロトコールが抗体ごとにあり、非常に詳細であるという点が大きなポイントだ。ウェスタンブロッティングであれば、抗体によってブロッキングの試薬をBSA、スキムミルクで使い分けるところまで細かく指示している。製品ひとつひとつに込められた、抗体の性能を存分に発揮して結果を残してほしいという開発者たちのこだわりが伝わってくる。それだけでなく、こうした詳細なプロトコールは、実際に製品で試験を行って結果が出ているということの裏返しでもある。
ユーザーを導くプロトコール
「CSTの推奨プロトコールは厳正な社内試験で良好な結果が得られると認められたものばかりです。推奨プロトコールでの実験を私たちがお薦めしている点はそこにあります」、とCSTの日本法人であるCSTジャパン株式会社のマーケティングマネージャー北園格子氏は語る。
例えば免疫蛍光細胞染色では、細胞固定法、ブロッキング方法、透過化法など、様々な視点から検証を加えている。そして、細胞固定はホルムアルデヒドがいいのか、メタノールがいいのか、ブロッキングには何を加えるべきか、透過化が必要か、といった実験結果を左右する一連の情報をウェブとデータシート(製品説明書)の両方で確認できる。購入前からユーザーにどうすればいいかの詳細な情報が提供されているのだ。図1(a)ではブロッキング方法を指定した例を示しているが、写真のように社内試験で良い結果が得られた方のプロトコールがウェブで閲覧できる。図1(b)は透過化を施した場合と施してない場合の例で、推奨プロトコールでは良好な結果が得られている透過化のプロトコールを紹介している。こうしたプロトコールは、図2に示すように製品の情報ページから容易にアクセスが可能だ。
今回は、第三者的に株式会社リバネスの研究所でも試験を行った。推奨プロトコールに従った場合、従っていない場合で、CST製のIκBα抗体を用いたウェスタンブロッティングを実施した。推奨プロトコールはCST製のスキムミルクを用い、一次抗体は4°C、O/N反応させることを薦めている。そこで、他社のスキムミルクや、一次抗体の反応条件を変えて比較を行った。結果、スキムミルクでは差が認められなかったが、一次抗体の反応条件で結果が大きく分かれた。特にリン酸化IκBα抗体の場合は、推奨プロトコールの4°C、O/Nでのみバンドが確認された(図3)。
研究者に共通の財産
CSTの推奨プロトコールは、抗体を使い慣れた人にとってはより良い結果を得るための近道に、初めて抗体を使う人にとっては従来通りのプロトコールに縛られずに、確実に結果を得ていくための勉強になるはずだ。アカデミアの研究者と同じように、あるいはそれ以上に抗体を使った実験を行っているCSTの研究員が推奨するプロトコール。これはひとつの研究者の財産といっても過言ではない。この地道な取り組みによって、抗体の性能を存分に活かして研究時間を有効活用できるユーザーが広がり、研究がより活性化されるに違いない。
●CSTジャパン株式会社
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