研究者のつなぎ役
株式会社マルハニチロホールディングス 中央研究所 古賀倫子さん
2007年に株式会社マルハグループと株式会社ニチロが統合し、世界一の水産総合食品メーカーとなった。つくばに置かれた中央研究所では、食品の開発や、サケの白子など廃棄される部位を有効利用した機能性素材の探索などの研究が行われている。そこで活躍するのが古賀さんだ。
研究者のつなぎ役
大学院卒業後、同社に入社し、現在は中央研究所管理企画課で働く。仕事の多くは、研究課題の企画や方針検討のための情報収集や分析、そして研究者や専門家とのコミュニケーションだ。「それぞれの視点に立つことで今まで見えなかったことが見えてくる」という古賀さん。ときにはサケの保全に携わる漁業協同組合連合会の人と話すこともある。
研究所の中には1つの製品を作るため様々な研究が共存する。基礎研究、工場スケールにするための研究、効率良く改良するための研究など1つ1つの成果の上に製品が成り立っている。「研究という突き詰めていく作業をしながらも、連携が大事なところが企業の特徴の1つであり、面白さだと思います」。所内の研究、経済、社会のニーズなどのデータを集め、研究の手法やテーマをチームへ提案する仕事に携わる。いわば研究所内のコミュニケーターだ。
生活に身近な研究がしたい
「研究者になりたい」と思ったきっかけは明確に覚えている。小学校3年生の頃、授業の中でオゾン層破壊の話を聞いたとき、「地球に穴があく」という事実に衝撃を受けたのだ。環境を守るための研究をしたい、という思いで九州大学の農学部へ進学し、環境浄化微生物の研究室へ進んだ。就職先を決めるとき、もっと生活に身近なところに関わりたいと思った。これまで研究してきた環境や微生物とも関わりがある「食」をテーマに会社を回り、最終的に現在の会社に心を決めた。小学生のときに環境問題について知らなければ、研究者になって解決したいと思うことはなかった。研究で知ったことを世の中に発信することで、いのちや自然の大切さを伝えることができるのではないか。仕事をする中、そんな思いを抱き続けていた古賀さんに1つのチャンスが訪れた。
新たな挑戦
「私たちは、魚のいのちを無駄にしないために、すべての部分を有効に活用する研究をしています」。自社の研究内容と絡めながら、いのちの大切さを子どもたちに発信したい、という思いで集まった研究所の11人のスタッフ。そのリーダー役として小学生向けの実験教室を企画している。
2008年12月には、経済産業省の社会人講師活用型教育支援プロジェクトに参加し、小学生向けに授業を実施した。「継続することが大切」と、今後も積極的に子どもに向けた活動を社内に浸透させていきたいと考えている。「今の仕事は一番自分に向いているかもしれない」。そう語る古賀さんのコミュニケーションは、研究所の壁を越え、多くの人との出会いを通して、世界を広げていく。