キュウリの巻きひげはなぜほどけない?

キュウリの巻きひげはなぜほどけない?

太い幹を持たないキュウリは、巻きひげで茎を固定しながら太陽に向かって伸びていきます。自分のからだがぶら下がっても巻きひげがほどけないのはなぜでしょうか?秘密は、そのかたちにありました。

巻きひげの不思議なかたち

cucamber巻きひげをよく見ると、途中で右巻きから左巻き に変わっています。巻く向きが変わっている場所を「反旋点」といい、巻きひげの丈夫さの秘訣となっています。これはどうやってできるのでしょう?巻きひげは、伸びるときはまっすぐで、何かつかまれるものに触れると先端がすばやくからみつきます。次いで、巻きひげを縦に走る2層のファイバーのうちの片側が、かたく乾燥する「木化」が起こります。すると、巻きひげの片面の細胞だけが縮んで、巻きひげに湾曲が生まれ、ねじれていきます。ところが茎と先端で両端が固定されているため、巻きが増える度に固定されたつるの中心に対する反発力も強まっていきます。こうして両端から逆向きの力がぶつかって「反旋点」が生まれ、反対方向に巻くばねがつくられるのです。

引っ張るとさらに巻く

キュウリがかわいそうかもしれませんが、巻きひげを左右に引っ張るとどうなるでしょうか。普通のばねを引っ張ると、湾曲が壊れ、巻きがほどけてしまいます。しかし、巻きひげの場合、反旋点がほどける方向とは逆側にくるくる回ることで、引っ張ったときにかかる力を逃がしてくれます。つまり、引っ張ると巻きの回転数が増えるのです。この現象のおかげで、キュウリの巻きひげはほどけにくいのです。 巻きひげのかたちは、ぶら下がってもほどけないばねを生む驚くべきものでした。生き物のかたちには、長い月日を生き延びた知恵が結集されているような気がします。(文・相山好美)