産学協働の場を利用した試み
慶應義塾大学 MEBIOS OFFICE
ここ数年、文部科学省などの後押しにより、高度な専門知識や技術を持つ博士号取得者を社会で活躍させようという取り組みが盛り上がっている。その中には、特定の領域で研究する人材に特化したプログラムも含まれる。その1つが慶應義塾大学医学系研究科が中心になって実施する「PhD躍動メディカルサイエンス人材養成」だ。
産学協働の場を利用した試み
博士人材に関しては、専門知識や技術に関する能力は高いが、即戦力として期待されるリーダーシップやチームマネジメントの能力に欠けるといったことがよく聞かれる。逆に、この点を補いさえすれば、非常に高い能力を持った人材として活躍できるともいえる。本プログラムでこの研鑽の場を提供するのが、医学研究科内にある産学協働「リサーチパーク」だ。平成13年に設立され、既に40社以上の企業と連携しながら医療の高度化に向けた研究が行われている。そして、ここから多数の若手研究者が民間企業だけでなく、省庁関連機関への就職を決めている。ここが本プログラムの車輪の片側を担っているのだ。
キャリアパスの多様化を支援する
もう1つの車輪を担うのが、キャリアプロモーションオフィス「MEBIOS(Medical Biologist Support)」だ。このオフィスの特徴の1つは、ビジネススクール(MBA)、知的資産センター(TLO)、クリニカルリサーチセンター(臨床研究)という大学内の既存の施設を活かして、研究以外の実践力を身に付けられること。しかし、ここの一番のユニークさは、実際の企業経営経験者などで構成されるメンターの存在だ。彼らを通して、企業で活躍するために必要な視野の広さ、事業を行う際のノウハウを学ぶことができる。これらの両輪で、企業ニーズにあった人材育成を目指す。
企業以外も視野に入れた人材育成
医学系人材が活躍できる場は民間企業にとどまらない。アカデミアと民間企業の間をつないだり、医療現場で使われている技術を一般社会に普及させたりすることを一番効率的に行えるのは、やはり現場を知っている人間だ。こういった民間企業以外への博士人材の輩出まで視野に入れている点も、このプログラムのユニークなところ。まだ始まったばかりのプロジェクトだが、それだけに高度専門知識を持つ人材活用のモデルケースとして、今後が注目される。