留学生との協働が グローバル感覚を養う 伊藤 雅一
名古屋産業大学 学長 伊藤 雅一 教授
グローバルな感覚を身につけるためには「まずは海外に行くことが大事」。しかしながら、その一歩がなかなか踏み出せない学生が多いのも事実だ。アジア地域を中心に7か国から300名の留学生が所属する名古屋産業大学は、そんな人材が国内にいながら、グローバルな感覚を身につける一歩を踏み出すためのしくみを提供している。
日本にいながらできる実践トレーニング
最近多くの大学で増加傾向にある留学生たち。しかしながら、留学生と日本人学生の交流は現状ではあまり活性化していない。自らも教鞭を振るう伊藤学長は、日本人学生たちの育成方法として、留学生との交流に目をつけた。「グローバルな感覚を持った人材になるためには、異文化に触れることが何よりも大事です。しかしながら、いきなり交流しろと言ったところで、学生も戸惑ってしまう。だから、日本人学生と留学生がともに学ぶしくみを作ったのです」。文科省の学生支援GPの採択を受けた多文化共生プログラムは、尾張旭市が推進するWHOの健康都市づくりと連携した実践型学習を通じ、日本人学生と留学生が一緒に課題を解決する。1つの目標に向けて意見を出し合う中で、相手の発言の背景にある文化的な違い、価値観の違いを理解することができるのだ。さらに海外に興味を持った学生が更なる成長をできるよう、豊富な語学学習の授業を作り、海外への短期留学制度も設置。50名の生徒が受講し、短期留学には5名が参加した。現在では日本人学生が留学生のスタディメイトとなる例が増え、学生による自発的な異文化交流が進んでいる。これらの活動を通じて多くを学んだ学生は、就職活動で志望したすべての企業から内定を獲得したという。
自立して生きていく力を養うために
さらに名古屋産業大学では、文科省の就業力育成支援事業の採択を受けて10月から新たな取り組みを開始する。この取り組みでは成長著しい中国、台湾などアジア地域の企業と、海外展開をしている国内企業を受入先として海外インターンシップのしくみを整備する。日本人の学生にはグローバル感覚を養いながら就業体験をする機会を与え、留学生には就職活動の一環として母国の企業を知ってもらう。さらに高大連携、産学連携の教育プログラムを充実させることで、社会のニーズに合った人材を輩出するのだという。「環境ビジネスのような成長産業で働くということは、自分で市場を創るということです。環境ビジネスは新しい産業ですから、次々と新しいビジネスを提供する企業が生まれていますし、オリジナリティがないと生き残れません。だから、そこで働くためには、新しいものを創造する力が必要だということです」。だからこそ価値観の違いにぶつかり、柔軟な発想を身につける、グローバルな視点を持った人材を育てていきたい。そんな伊藤学長が目指すのは、すべての学生が社会で活躍していく未来だ。(文 長谷川 和宏)