音の地図で音楽をもっと楽しく

音の地図で音楽をもっと楽しく

通学中や勉強中に気分転換したり、好きな歌手のライブに行ったり。
私たちの日常に音楽は欠かせません。
音楽という目に見えないものをかたちにすることで、今まで意識したことのなかった「自分の音楽」を見つけることができるかもしれません。

歌のサビを見つけ出そう

テレビや街中、インターネットなど、私たちは、常に音楽に触れています。
曲を覚えていなくても、サビだったらわかる!という曲もありますよね。
「サビ」は私たちの印象に強く残ります。
産業技術総合研究所の後藤真孝さんは、「音楽のサビ」をコンピュータに見つけさせる技術を世界で初めて開発した開発者です。

どんな技術なのでしょうか?

後藤さんのプログラムでは、音の周波数成分を解析し、似た音のパターンのくり返しを見つけ出します。
それらの繰り返しを棒状の図に表すと、曲を目で見ることができる「音楽地図」になります。
1つの曲の「音楽地図」には、同じような長さの緑色の棒が繰り返し現れます。
もっとも長い繰り返しは曲の1番と2番のフレーズ。
そこに重なる一番上のオレンジ色で目立つ繰り返し部分が「サビ」です。
コンピュータはこのようなパターンを自動的に見つけ出し、「サビ」と認識するのです。 音楽地図の活用でもっと自分がわかる 「音楽地図」でコンピュータが音楽のパターンを見つけ出せるようになると、私たちはすでにある音楽をもっと楽しむことができます。
カラオケでたくさんの曲を歌いたい!というとき、サビだけ選んで歌うことができるようになります。
後藤さんの他の技術も使えば、お店にない新曲をカラオケにしたり、ドラムの音色を調整したり、と自分好みの加工をして歌うことも可能です。
これは絶対歌うぞ!というお気に入りの曲を登録すると、似た曲をコンピュータにおすすめしてもらうこともできます。
「音楽地図」表示機能は既にインターネット上に公開されていて、無料で使うことができます。
音楽は絵画などと同じ、人の感性で受け取る情報のかたまりです。
ひとりひとり無意識に受け取り、その受け取り方は違います。
コンピュータの助けで好きな曲を研究できれば自分を改めて知ったり、思いがけない曲と出会ったり、と音楽との付き合い方は変わるでしょう。
たくさんの情報が簡単に手に入る今、見えない情報をかたちにしていくことで、私たちの生活はまた豊かになっていくのですね。(文・環野真理子)

取材協力:独立行政法人産業技術総合研究所情報技術研究部門上席研究員兼メディアインタラクション研究グループ長後藤真孝さん