3D プリンタで臓器模型はオーダーメイド?

3D プリンタで臓器模型はオーダーメイド?

「がんですね、手術しましょう」と言われたとき、これまで医師に見せられてきたのは影の写った写真です。でもこれからは、人によって少しずつ違う臓器のかたちや大きさ、病気の場所、本物の質感まで再現する新しい模型で説明してもらえるかもしれません。この模型が、医療をどう変えるのでしょうか。

試すからはじめてわかること

服を買うとき、靴を買うときは試着がかかせません。サイズが合わなかったら困ります。新しい製品も試作品をつくり、見て触って確かめます。しかし、医療では違いました。手術する前には放射線でからだの断面を撮影するCTや、磁場や電場を用いてからだの内部を撮影するMRIの平面画像から解釈し、経験で判断されてきました。患者の体内を見たり、臓器に触ることはできません。しかし、新しい模型Bio-TextureModeling®では、CTやMRIのデータからその人の臓器や病気の場所までをかたちにして再現できます。

3Dプリンタを医学に持ち込む

biotexture-zoukiこの模型は3Dプリンタという機械でつくられています。3次元の図面を入力すると、そのまま立体をつくってくれるマシンです。原理は、普段家庭で使っているインクジェットプリンタと同じで、インクの代わりに樹脂を吹きつけます。使う樹脂はUV(紫外線)で固まる光硬化性樹脂で、薄い樹脂の層を何層もつくってはUVを当てて固めるという工程をくり返し、3次元の図面と同じかたちに仕上げていきます。本物そっくりのやわらかい質感を出すのは、特別に開発された樹脂素材です。やわらかさを何種類も変えた素材をつくり、臓器の質感と比べた結果生まれました。この素材で骨や腎臓、肝臓などを製作します。また3Dプリンタ技術を応用してぷるぷるの脳も再現できました。

臓器を触って確かめられる

biotexture-printer新しい臓器模型は医師が患者に病状を説明するときに活用できます。個人のデータをもとにつくる完全にオーダーメイドです。たとえば肝臓がん患者のCTを元に、外面が透明で、がんと血管を白くして内部構造までわかる肝臓の模型をつくると、「ここに腫瘍があり、これだけ切離します」と手術を具体的に患者さんに説明できますね。医師は模型でイメージトレーニングをし、手術をより安全に行えるようになりました。この他、医学部の学生の手術練習などにも活用が考えられています。あなたは自分の臓器の模型をつくってみたいですか?CTやMRIのデータさえあれば、オーダーメイドの模型がつくることが可能です。自分の臓器を見て触って確かめる、そんな時代が目前まで来ています。

取材協力:神戸大学医学部杉本真樹さん、株式会社ファソテック渡辺欣一さん