うちの子紹介します 第24回 鳥類 ウズラ

うちの子紹介します 第24回 鳥類 ウズラ

研究者が、研究対象として扱っている生き物を紹介します。
毎日向き合っているからこそ知っている、その生き物のおもしろさや魅力をつづっていきます。

uchinoko_uzura1手のひらに乗るほどからだが小さく、丸みを帯びた姿はまるでぬいぐるみそのもの。
そんなかわいらしい容姿の持ち主「ウズラ」という鳥をご存知でしょうか? ウズラと人の関わりは古くから伝えられ、紀元前3000年頃のエジプトの壁画にも描かれています。
また、日本でも古事記・万葉集に登場し、戦国時代には、その鳴き声が「御吉兆(ゴキッチョー)」と聞こえることから、縁起のよい動物として親しまれてきました。
大正時代になると産卵を目的として、ウズラの品種改良が行われるようになります。 ウズラの卵はニワトリの卵と比べ栄養価が高く、特に美容や発育を促進させるビタミンB2が非常に多く含まれます。
また、高タンパク・低脂肪であり健康食品として注目されています。 1959年、アメリカの研究者によりウズラが実験動物としても有用であることが報告されました。
ウズラは小柄なため広い実験施設を必要としません。16〜18日で孵ふ化かし、6週間後には産卵を開始するなど世代交代が早いという特徴は、実験動物の代表であるマウスに匹敵するものです。

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また、卵の殻を開けて孵化させる「代理卵殻法」と呼ばれる方法を用いることで、発生段階での胚の操作や細胞の移植が可能になります。
この方法を使うと、別の鳥類の細胞を移植し、その移植した鳥類の精子や卵子をウズラの卵の中でつくることができるので、トキなど絶滅危惧種の保全への応用が期待されています。
また、この方法ではウズラの発生過程を直接観察できます。
心臓が動いている胚の姿を目の当たりにして、生命の神秘さを深く感じることができるでしょう。
さらに最近、ウズラゲノム配列の解読が進んだことで、鳥類を代表する実験動物として、さらなる研究への貢献が期待されています。 ウズラは「見てよし」・「食べてよし」・「研究してよし」の人に欠かせない動物なのです。

(文・田崎 秀尚) 

取材協力 : 東京農業大学 農学部 畜産学科 家畜繁殖学研究室

写真提供 : 東京農業大学大学院 農学研究科 金子美幸さん