「電子ビーム」で描く マイクロ文字
お金を眺めていると1時間でも2時間でも飽きない・・。
というと何だか悪徳商人みたいですが、印刷技術のお話です。
たとえば一万円札にはホログラムや透かし文字、小さなマイクロ文字など偽造防止のために様々な印刷技術が駆使されています。
10000の文字の下には「NIPPON GINKO」のマイクロ文字が0.25mmほどの大きさで書かれています。
しかし、今回発表された凸版印刷株式会社の最新の技術はもっとすごい。
なんと0.75mm×0.75mmの紙に書かれた世界最小サイズの本が日本で作られたことが3月9日、発表されました。
その本を生み出したのはスマートフォンなどの小型の通信機器などを支える小さな半導体集積回路(LSI)の回路図を印刷する技術を応用した印刷技術です。
LSIを高性能にするためにはより細かい回路が必要です。
それを作るため、回路をシリコンウェハに焼き付けるための「ネガ(版)」をつくります。
美術でやる版画は彫刻刀で木を削り、版をつくりますが、ここでは彫刻刀ではなく電子ビームを使います。
電子ビームはとても短い波長の光なので、小さな小さな範囲に光を当てることができます。
まず、ガラス基盤に厚さ数ナノメートルの遮光膜を塗り、その上に感光性の樹脂を塗ります。
この樹脂は、電子ビームが当たると化学反応し、溶けやすくなるという性質があります。
これにより描きたい線を描き、現像と洗浄を行なっていくと、ネガができあがるのです。
この技術により、現在は数十ナノメートル(100万分の1mm)のレベルの太さの線を描けるようになってきています。
これまでの最小の本は1996年にロシアで刊行された『カメレオン』(0.9×0.9mm)。
今回作られた本は『四季の草花』。
全22ページに花の絵とその名前が書かれています。
これまでの記録を大きく塗り替える豆本は2013
年3月中にギネスに申請されるそう。
印刷技術はマンガや本だけではなく、スマートフォンやパソコンなど私たちを支える技術に欠かせないものなんですね。
参考:http://www.toppan.co.jp/news/2013/03/newsrelease1480.html