環境にやさしい鉱物が、燃焼熱を電気にする

環境にやさしい鉱物が、燃焼熱を電気にする

最近、空気の汚れが国を超えて問題になってきています。
この汚れの原因は自動車や化学工場などで発生する排気であると言われています。

天然のテトラへドライト(Cu,Fe,Ag,Zn)12Sb4S13 (産総研地質標本館所蔵標本)

天然のテトラへドライト(Cu,Fe,Ag,Zn)12Sb4S13 (産総研地質標本館所蔵標本)

一方で、これらの排気に伴う高熱をエネルギーとして活用する方法が模索されています。
北陸先端科学技術大学院大学、産業技術総合研究所、理化学研究所の合同研究チームは、高熱を電気に変える技術のカギを発見しました。
それはなんと「石」です。
熱から電気を生み出す方法とは、2種類の金属間の温度差から電気を作り出す技術です。
その原理は1821年にゼーベックが発見したことで、ゼーベック効果と名づけられ、火星探査機キュリオシティでも使われている技術です。
これまで、適した金属は鉛や亜鉛を多く含む鉱物が主でしたが、有害元素であることから、実用化に向けた技術にはなっていませんでした。
しかし今回、環境にやさしく身近な金属である銅、硫黄を多く含む鉱物(テトラヘドライト)の発見が実用化への道を開きました。

熱から電気への変換効率が、工場排気の温度である400度付近で7%という値を示したのです。
この値は自然鉱物で実現されれば世界初の高い効率です。
一方で、実用化には10%以上の変換効率が必要です。
これまでは、人工物質をつくり、変換効率を上げようと試行錯誤されてきました。
それだけ、自然界に多く存在する金属を含む鉱物で発電を実現することは難しいのです。

テトラへドライトの結晶構造の一部。CuがSbの方向に大振幅振動する様子を示している。 

テトラへドライトの結晶構造の一部。CuがSbの方向に大振幅振動する様子を示している。

今回の発見から、自然に存在する銅、硫黄などで構成される鉱物の各元素の配合が変わることで変換効率が実用化の10%に達する可能性が出てきました。
現在、パソコンやスマートフォンは、生活にかかせない道具です。
これらを使っていて、気づくことはありませんか。使っているうちに熱くなってきますよね。
この熱も電気に変換されれば、スマートフォンをわざわざ充電しなくても済むのに。
そんな夢が今回の研究から実現する日がくるかもしれませんね。

参考:自然界に存在する鉱物で熱電発電を可能に ― 環境にやさしい高効率な熱電変換鉱物を発見 ―

サイエンスブリッジニュースPDFはこちら