アレルギー性皮ふ炎をめぐる マクロファージの本性
花粉症の症状はおさまりましたか?
近年、花粉症やアトピー性皮ふ炎などのアレルギー症状に悩まされている人も多いのではないでしょうか。
実はアレルギーを発症する日本人は、年々増加傾向にあるといわれています。
しかし、この症状を抑える仕組みはほとんどわかっていません。
そのような中、東京医科歯科大学の大学院医歯学総合研究科免疫アレルギー学分野の烏山一教授らの研究グループは、アレルギー症状を抑える新たな仕組みを発見し、 2月22日に国際科学誌Immunity(イミュニティ)オンライン版で発表しました。
この研究では、皮ふのアレルギー炎症が起こるよう遺伝子操作されたマウスを用いました。
そして皮ふ炎部分に集まる白血球を調べたところ、半数近くがマクロファージであることがわかりました。
また、このマクロファージは、白血球の1つ炎症性単球が血管から皮ふに移動し、分化したものであることも突き止めました。
次に「マクロファージはアレルギーの炎症を引き起こし悪化させる」というこれまでの報告をもとに、炎症性単球が皮ふに移動しないように遺伝子操作したマウスを作り、その影響を調べました。
このマウスでは、皮ふにマクロファージが集まれないため、炎症は軽くなると予想されます。
ところが、炎症は軽くなるどころかむしろ悪化し、長期化する結果となりました。
さらに、このマウスに正常マウスの炎症性単球を注射すると、炎症が軽くなることがわかりました。
炎症を引き起こす炎症性単球が、皮ふの炎症部分に移動してマクロファージへ分化すると、炎症を抑える役目に変わっていたのです。
皮ふ炎を悪化させると思われていたマクロファージが、実際は症状を抑えていたとは、ヒトも細胞も見かけによらないということですね。今回の発見から新たなアレルギー治療薬の開発が期待されています。
参考:東京医科歯科大学プレスリリースhttp://www.tmd.ac.jp/press-release/20130222/index.html