【研究活性化計画】高速イメージングが可能にする、これからの細胞研究

【研究活性化計画】高速イメージングが可能にする、これからの細胞研究

近年、iPS細胞を代表として、細胞運命に関わる生命現象への探求が活発化する中、ケミカルバイオロジーや創薬研究の分野でハイスループット化の必要性が高まっている。高速細胞イメージングシステムCeligo®シリーズは、細胞計数や蛍光解析によりスクリーニングを省力化・スピード化することを可能にするとともに、ウェル全体を正確に解析する強みが様々なアプリケーションの可能性をもたらす。今回は、研究にCeligoを取り入れている理化学研究所の小林氏とSCIVAX株式会社の新井氏にお話を伺った。

 

ウェルの端まで見逃さずに薬剤の効果を評価する

理化学研究所 ケミカルゲノミクスグループ 分子リガンド探索研究チーム 小林大貴 氏

 

理化学研究所ケミカルゲノミクス研究グループ分子リガンド探索研究チームでは、細胞のリプログラミングや幹細胞の分化などの生体機能に関わるエピジェネティクスを標的にした化合物の探索と、その作用機序を明らかにすることを目指している。その中で小林氏は、ヒト由来繊維芽細胞などをiPS細胞へ効率的に誘導する化合物の探索と、そのメカニズムについて研究を行っている。

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iPS化を促進する化合物の高効率スクリーニング

低分子化合物を用いたiPS細胞作製の効率化については、これまでに細胞周期進行に重要なキナーゼを阻害する低分子化合物が山中ファクターによる細胞のiPS化を促進すること※1、TGF受容体キナーゼ阻害剤がSox2やc-Myc遺伝子の代わりに利用できること※2などが知られている。小林氏の仕事は、特にエピジェネティクス制御に関わる化合物ライブラリを用いて、iPS化促進に働く低分子化合物をスクリーニングすることだ。12ウェルや24ウェルのプレートに5,000 個の細胞を撒いて、できるiPS細胞コロニー数はウェルあたりわずか3つ程度。多能性幹細胞マーカーのNANOGやOCT4等を免疫染色し、蛍光によってポジティブなコロニー数を定量するため、ウェルの端まで正確に測定できるCeligoを利用している。小林氏が所属するチームは、実は他社のセルイメージング装置も複数持っている。それらとの使い分けについて小林氏は「細胞の内部構造や局在を詳しく見たい場合には他のものを使いますが、ウェル全体の情報が欲しいと思ったら撮像に時間がかかります。Celigoは細胞の形態がわかるレベルの解像度でウェル全体を撮像し、短時間で蛍光でのスクリーニングを行うのに適しています」と話す。

 

代謝が関与するメカニズムを細胞レベルで追う

小林氏の興味は、化合物による制御を切り口にして、生命現象のメカニズムを解明していくことにある。慶應義塾大学の博士課程では、がん細胞の遊走を抑制する化合物の作用メカニズムを細胞生物学の手法を駆使して研究していた。「今興味を持っているのは、iPS細胞とがん細胞の共通性です」。i PS細胞化しやすい条件は、p53 遺伝子の抑制、低酸素状態など、がんで観察される条件でもある。それらが関与する解糖系や酸化的リン酸化などの代謝系に小林氏は着目している。「iPS 化とがん化の共通メカニズムから、代謝制御と幹細胞性の関連を見つけられればおもしろいですね」。従来までは表現型の変化した細胞の数を測るためには、WST-1アッセイのような生化学的手法が主流だったが、細胞数は変わらないが代謝が落ちる、というケースには対応できない。「そのようなケースでの細胞計測にも直接カウントするCeligoは活かせるはずです」。そう小林氏は語った。

 

※1 Li Z. and Rana T. Nature Communications (2012), 3, 1085
※2 JK Ichida et al. Cell stem cell (2009), 5(5), 491-503

 

 

 

三次元培養の定量的評価により、新たなアッセイ系を生み出す

SCIVAX株式会社 主任研究員 新井一也 氏

 

SCIVAXが開発したNanoCulture® Plate(NCP)は底面に細胞よりも小さな網目構造を持つ細胞培養プレートだ。この網目構造を足場として細胞が凝集してスフェロイドを形成し、三次元培養を行うことができる。同社ではこのプレートを用いた受託事業、アプリケーション開発、創薬研究等を行なっており、様々な場面でCeligoを活用している。

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定性評価から定量評価へ

単層培養と比較して、三次元培養はより生体の状態を正確に反映するとされる。そのためがん研究をはじめとして利用者が増えており、SCIVAXでは細胞種により異なる三次元培養条件の最適化を受託業務として行っている。その評価のため、顕微鏡による目視では定性評価しかできず、生化学的アッセイではスフェロイドの数、形や大きさを知ることができない。「Celigoはスフェロイドの数や大きさ、増殖性、運動性をハイスループットで定量評価するのに適しています」と同社主任研究員の新井氏は話す。さらに色や形、大きさによって検出の閾値を設定するという機器の特性を活かし、がんを対象とした新たなアッセイ系を確立した。

 

低酸素蛍光プローブにより広がる用途

NCP上に形成されたスフェロイドは、細胞が凝集しているためその内部は低酸素状態になっており、血管新生の起こっていない初期がんの状態をよく再現している。新井氏は自社の低酸素蛍光プローブとCeligoを用いて、がん細胞の上皮間葉転換(EMT; Epitherial Mesenchimal Transition)を定量評価する方法を開発した。EMTは、がん細胞の浸潤や転移におけるキーイベントのため、これを阻害する化合物は、有効な治療薬となり得る。従来、EMTの定量は、孔の開いたメンブレンの上方でがん細胞を培養し、一定時間内に孔を通って下方へ移動する細胞数を計測する浸潤アッセイや、定量RT-PCRやイムノブロットによるマーカー遺伝子の変動の測定によって行われてきた。新井氏が開発した方法は、EMTによるスフェロイドの崩壊を、低酸素状態を測定することにより擬似的かつ簡便に評価するものだ。当初、プレートリーダーでの測定を試みたが、培地を含むウェル全体の蛍光強度を測定するため、S/N比が低く精度に問題があった。今回開発した手法は、ウェル内のすべてのスフェロイドについて、個々の蛍光強度を解析できるためにS/N比が高く、Celigoならではの特性を活かした方法だといえる。この手法はEMT阻害剤のハイスループットスクリーニング法として、今後創薬研究への応用が期待される。

Celigoは販売当初、単層培養の解析を目的としていた。しかし、SCIVAXのように三次元培養の解析にもその利用は広がっており、機器の改良も加えられている。今後もユーザーが増えていくことで、様々な使い方が現れてくるだろう。

 

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