一歩先ゆく「天気予報」をつくり出せ 山根 省三

一歩先ゆく「天気予報」をつくり出せ 山根 省三

同志社大学理工学部環境システム学科准教授

これまで観測し続けてきた膨大な気象データを解析し、法則性を見出すことで生まれたのが天気予報システム。
しかし、地面との熱交換、海水の蒸発……複雑に影響しあう自然現象をすべて捉えることはできず、ちょっとした違いがどんどん大きくなるため、3日後、5日後、1週間後の天気は、予想とずれてしまっているのだ。

気象を健康診断する

気象の予報が難しい一方で、確実なものもある。
それが実際に得られた観測データだ。
山根さんは、この「観測データ」と、パソコン内につくり出された仮想空間を観測する「シミュレーション」を組み合わせる研究に取り組んでいる。
健康診断でまず体温や血液を検査するように、これまで観測できなかったところはシミュレーションによって情報を集め、シミュレーションでうまく再現できないところは観測データを元に改変を加えることで、予報の精度を向上させるという研究だ。

狭く、細かく測定しよう

いま手がけているのは、同志社大学がある、京田辺地域に特化した微気象再現システムの開発だ。
現在、気象庁が観測のために置いているポイントは数キロ単位。
より細分化された観測を行うことで、住宅地と森林地域、田んぼに囲まれた地域…などから得られた情報をあわせていく。
これで小さい空間での大気現象を正確に理解することができるようになる。
例えば、ずっとその地域に住んでいる人だから知っている、町でやけに涼しい区画や、霧の出やすい時期などを科学的に解き明かすことにつながっている。

気象をすべて理解できたとき

「いずれは、葉1枚との熱交換など、細かい現象までも取り込むことで、気象のすべてを理解したいんです」と意気込む山根さん。
研究が進めば、1週間後の天気を「予報」ではなく「予定」として発表できる日が来るかもしれない。
さらに、どこに畑をつくるのか、森林を伐採するとどう風の流れが変わるのかなど、気象情報を活用する可能性も見えてくる。
まだまだ謎が多い微気象を解明することで、いつかきっと天気予報の概念すら変えてくれるはずだ。

この記事は、同志社大学理工学部研究紹介「JOURNEY」より転載しています。
「JOURNEY」には、他にも機械や電気に関する研究者の取材記事があり、山根先生が高校生にオススメする気象研究のプランもあります。
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