「会いたい」願いをロボットにこめて 吉藤 健太朗

「会いたい」願いをロボットにこめて 吉藤 健太朗

「遠く離れた人に会いたい」という願いを叶えるコミュニケーションロボット「OriHime / オリヒメ」は、ひとりベッドの上で療養の毎日を過ごしていたときの吉藤健太朗さん自身が欲しかったもの。
今は、それを必要としている人にひとりでも多く届けようと、開発に取り組んでいます。

ひとりで過ごすさみしさを思い出して

子どもの頃、からだが弱くて学校に行けなかった吉藤さんは、たったひとりで過ごす毎日に精神的なダメージを受けていました。
学校に通う力を取り戻せたきっかけは、地元のイベントで、器用に一輪車に乗る等身大のロボットに出会ったことでした。
吉藤さんは、そのロボットを開発した先生がいる工業高校に進みました。
在学中に、タイヤを上下に動かして段差を「登る」ことや、斜面を走行中でも座席は水平のまま保つことができる、人に優しい車イスを開発。
それが注目されてテレビの取材を受けるようになると、商品化に期待する多くの人から電話がかかるようになったのです。
吉藤さんは子どもの頃の自分を思い出しました。
からだが不自由な人が苦労しているのは、身体的なことだけではなかったのです。
「病気で学校に行けなかった頃の自分も孤独でした」。
そして、「孤独」を癒いやすコミュニケーションロボット「OriHime」を開発したのです。

P9167077

人とつながる「分身ロボット」

たとえば、病気などで家から出られないとき、自分の代わりにOriHimeを連れて行ってもらえば、ウェブカメラがついた目で外の様子を見、マイクの耳で音を聞き、そして口にあるスピーカーを通して、一緒にいる人に声を届けることができます。
コミュニケーションロボットは人の気持ちや状況に合わせて笑顔になったり、怒ったりと、顔の表情が大事だと思われがちですが、OriHimeは無表情。
「伝統芸能の能と同じで、顔の表情はなくても、うなずいたり、首をかしげたりと、からだの動きが感情を豊かに表現できることがわかりました」。
多くの人に使ってもらえるように、吉藤さんは2012年9月に会社をつくりました。
「OriHimeは、昔の自分が欲しかったもの。
早く必要としてくれている人たちに届けたいですね」。
OriHimeが、離れた場所にいる人と人をつないでくれる日は、もうすぐです。

株式会社オリィ研究所
吉藤健太朗(よしふじけんたろう)

2005年にインテル国際学生科学技術フェア(ISEF)にて団体研究部門GrandAwardで3位を受賞。
早稲田大学創造理工学部に在学中の2012年9月に株式会社オリィ研究所を設立、代表取締役所長を務める。

http://orylab.com/