技術を使いこなして、「欲しい」を形にする 西尾信彦

技術を使いこなして、「欲しい」を形にする 西尾信彦
情報理工学部 情報システム学科 西尾信彦 教授

学校帰りについ買ってしまうお菓子やよく訪れるお店など,私たちの行動には人それぞれ傾向があります。この傾向をうまく利用すれば,生活に役立つ情報をひとりひとり手に入れることが可能です。そんな日々の行動(ライフ)を記録(ログ)したものがライフログです。

西尾先生

「ツイデニ寄ッテミテハドウデスカ?」

ライフログを活用するためには,食べものの好みや今の空腹感,さらに現在位置や近くの店舗の営業情報など,さまざまな情報を正確に知ることが必要です。そうすれば,「少し先にあるお店で,好きな商品のセールを実施中!」など有益な情報を私たちに渡すことが可能です。そのためには,実世界とそれに関連するデジタルデータを融合させることが必要です。

たとえば,場所の情報を融合するために使うのが地図アプリです。“自分が今いる場所という実世界”と“地図というデジタルデータ”を“GPSという技術”が結びつけてくれます。しかし,よく考えてみると,人がより多くの時間を過ごすのは,実はGPSが使えないところ,つまり屋内になるのです。先生はここに目を付け,屋内測位システムの研究を進めました。

日本一複雑な地下街をデータ化

西尾先生屋内測位を進めるにあたって,先生は地下街のパノラマ地図を作成することと,屋内でGPSの代<か>わりに位置情報提供できる設備の研究に取り組みました。

前者の研究では,上方と側面5方向に付けたカメラで全方位撮影できる装置を台車に乗せて,学生たちと迷路のような大阪梅田地区の地下街を歩き回り続けました。しかし,往来する人で埋め尽くされた地下街では,撮影画像の店舗や通路のほとんどが通行人で隠れてしまいます。そこで,通行人も含めて撮影した膨大なデータに「動くものを取り除く」という画像処理を行い,無人の地下街のパノラマ地図を作成したのです。

また,後者の研究では,GPS衛星からの電波の代わりに無線LANを活用して位置を知る手法を実用化しています。このような新しい設備では電源の確保が大変ですが,先生は扱うデータを必要最低限にとどめて,企業と連携した屋内光での発電技術を活用することで電源を新しく引かずに屋内でも位置を知る研究を進めています。

自分の欲が新しいものを生み出す

「世の中には多くの便利な技術があるのに,実は全然使いこなせていないんです」。この使われていない技術を使うために必要なものは,「欲しいと思う気持ち」だと先生は言います。だからこそ,「まずは,自分のために,自分が明日からでも使いたいものをつくる」ことが先生の方針。

「それ欲しい。すぐつくってよ!」と学生を巻き込みながら,誰よりも自分自身が貪欲にアイデアを形に変えていっています。