あなたのおへそで新種を発見!?
おなかの真ん中にポツンとあるおへそ。
普段は特に気にもとめられていないことでしょう。
しかし、そんなところにあえて注目し、どんな細菌が棲すんでいるのかを研究した人がいます。
アメリカのノースカロライナ州の大学教授ロブ・ダンさんは、生物部の学生がおへそに生息する細菌を培養してみたことをきっかけに、おへその中にはどんな種類の細菌が棲んでいるのか調べてみようと思いつきました。
ボランティア60人のおへそから細菌を採取して分析してみたところ、なんと、全部で2368種類もの細菌が見つかったのです。
少ない人でも29種類、多い人では107種類にもなりました。
ひとりのおへそには平均で67種類もの細菌が棲んでいるのです。
しかも、そのうち1458種は新種の可能性がある細菌でした。
さらに調べていくと、日本に渡ったことがない人から日本の土壌でしか発見されたことのない細菌が見つかったり、数年間おへそを洗っていなかったという人からは、氷冠や熱水噴出孔といった 過酷な環境下にしか棲んでいない細菌が2種見つかったりしたというのです。
そして、60人全員に共通して生息する細菌はひとつもなく、人それぞれ棲んでいる細菌の種類とその構成比が違うことがわかりました。
多種多様な細菌が存在し、その上半分以上が新種となると、これはまるで「熱帯雨林」のよう。
熱帯雨林は、面積にすると地球表面のたった3%しかありませんが、地球上に生息する生物種の50%以上が棲んでいるといわれています。
ひとつひとつの環境に存在する生物の種類とその構成比は異なるうえに、今なお新しい種の生物が発見されています。
性別も年齢も、育ってきた環境も、そして暮らしている場所も気候も人それぞれ異なります。
人々に固有の生活スタイルがどのように細菌の種類の構成にかかわっているのかを知るには、まだまだ研究が必要です。
こんなに近いところに「熱帯雨林」があったなんて。 あなたのおへそにも新種の細菌がいるかもしれませんね。 (文・花里美紗穂)