どう思う?キミのまちで遺伝子組換え作物を育てるということ
害虫耐性遺伝子組換えトウモロコシを例に, 遺伝子組換え作物の導入について考えてみよう。
世界最大のトウモロコシ生産国アメリカで,トウモロコシ生産農家に大きな経済的被害を与えている「ヨーロッパアワノメイガ」。アメリカで初めて確認されたのは1917 年のことだった。トウモロコシの葉の上で孵化(うか)したこの蛾がの幼虫は,集団で葉をかじり,農薬が届かない茎や雌穂(しすい)の内部に侵入する。雌穂が食い荒らされて結実しないという直接的な被害の他に,かじられて弱った茎が風で折れる,傷口から病原菌が侵入しやすくなるなどの間接的な被害もあった。2000 年の時点で,アメリカでは年間約13 億ドル相当分のデントコーンを損失していた。
そこで誕生したのが,土壌に棲すみ,昆虫だけを殺す細菌「バチルス・チューリンゲンシス(Bachillus thuringiensis )」の遺伝子を導入し,殺虫性タンパク質を自らつくり出せるように育成したトウモロコシだった。ヨーロッパアワノメイガの幼虫がそのタンパク質を食べると,消化管の中で分解されて,消化管の細胞表面にある受容体と結合する欠かけら片が生じる。これが受容体と結合すると,消化管の細胞が死に,消化管に穴が開いて幼虫そのものが死に至る。一方,ヒトの消化液に含まれる酵素は昆虫とは異なるため,同じタンパク質を分解しても同じ欠片は生じないうえ,ヒトにはその受容体自体が存在しない。そのため,この組換えトウモロコシは,ヒトにとっては毒にならないのである。2002 年には,前年比で殺虫剤使用料が3 分の1 に減り,収穫高も21,700 万ドル増加したという。
遺伝子組換え作物の導入に対する意見はさまざま。
いろいろな立場の人の意見を聞こう。
肯定的な意見
- 遺伝子組換え技術はすでに医薬品の製造などでは一般化している。(消費者)
-
遺伝子組換え食品を食べ続けても問題がないことを
確認している。(厚生労働省) - 製品の原料となるコーンスターチなどの価格が高騰しているため,遺伝子組換え原料を使わざるを得ない状況にある。(食品メーカー)
否定的な意見
- 遺伝子組換え作物は生態系を壊す。手間はかかるが 長年培われてきた従来の農法を守ることが,自然にもよ いし人間にもよい。(農家)
- 100%安全でないものは食べたくない。自然の摂理に 反したことを,人間がやってはいけない。(消費者)
- タンパク質が効かない害虫が出現している可能性があ る。農薬にしても組換えトウモロコシにしても,使いす ぎてはだめで,使用には制限を設けるべきだ。(研究者)
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