1か月で20,000倍に増殖 アブラムシ

1か月で20,000倍に増殖 アブラムシ

超生命体ラボ:アブラムシ超生命体ラボとは、常識を超えた生命、すなわち「超生命体」を追い求め、生物の驚異にせまる研究を紹介するコーナーである

 

1匹では軟弱

今まで元気だった植物に突然元気がなくなり、葉が縮れる。
よく見てみると、みっしりと小さい虫がくっついている。害虫、アブラムシだ。

彼女らは、体長1〜4mm程度、最大で7mmの微小昆虫である。
「口針」と呼ばれる針状の口を使って植物の液を吸い、栄養とする。
アブラムシにはテントウムシやクサカゲロウなど天敵が多い。
からだもやわらかく、襲われたらひとたまりもない。
そこで彼女らは、余分な糖分を分泌してアリに与える代わりに自分の身を守ってもらう。
他の生物に助けられることで何とかして生きようとしている。

すさまじい繁殖力

1匹では生きられないアブラムシが現代まで生きることができた理由は、驚くべき繁殖スピードにある。
アブラムシのメスは減数分裂をせず、体細胞分裂のように卵をつくることができる。
つまり、親と同じ遺伝子を受け継いだクローンを産むことができるのだ。
この生殖方法は「単為生殖」といい、交尾や受精をしなくてよいので、オスと出会うといった時間と労力が不要だ。
加えて、メスのお腹の中に子どもができたとき、すでにその子どもの中にも、その子どもの細胞が誕生しており、お母さんの中に孫まで身ごもっている状態だ。
こんなことは、交尾をする生物にはまったくまねができない。
では、アブラムシの繁殖スピードはいったいどれくらいなのか?
モモアカアブラムシの繁殖力を調べた研究では、メス1頭は10日前後で成虫となり、寿命も約40日と短いが、その一生を終えるまでに90匹もの子を産んだという。
こういった生殖方法をとることで、アブラムシ1匹は1日で1.387倍に増え、1か月では1.387の30乗、18、293匹にまで増えることができる。
こうしてどんどん数をふやすことであっという間に植物を覆い尽くしてしまう。
アブラムシは、自らを防御する術の代わりにこの凄まじい繁殖力をもつことで、ここまで繁栄することができたのだろう。(文・笹井裕里)