音を操り、未来の常識をつくる 西浦 敬信

音を操り、未来の常識をつくる 西浦 敬信

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情報理工学部 メディア情報学科 西浦敬信 准教授

まるでそこにいるかのように話しかけてくる3D音像,見たい人にだけ音が聞こえるテレビなど,まるでSF映画に出てくるような技術が,あともう一歩で実現しそうです。研究が進み,「音」が持つさまざまな性質を活用できるようになるにつれて,私たちと音のかかわりは大きく変わろうとしています。

西浦先生

聞こえない超音波が,音を運ぶ

「音」は空気の振動であり波の性質を持つ,と物理の授業で習います。では,周波数によって音の「伝わり方」が異なることを知っていますか。たとえば,私たちに聞こえる,約20Hz~20kHzの周波数帯の可聴音は,音源から四方八方に広がって伝わりますが,周波数が高くなるとまっすぐに進みます。よって,私たちには聞こえない「超音波」のような高周波数の波は,光と同様にまっすぐ進み,さらに壁に当たると鏡のように反射するような伝わり方をするのです。この超音波の持つ直進性を積極的に利用し,可聴音を超音波に乗せることで,超音波が音の運び役となり,狙った方向に音を届ける「超音波スピーカ」が,すでに実用化されています。

狙った場所に見えない音源を生み出す

西浦先生は,この超音波スピーカを使い,空間内の狙った場所にあたかもそこに音源があると人間が感じる「音像」をつくり出す「音像プラネタリウム」を世界で初めて開発しました。

超音波スピーカから壁に向けて超音波を放射すると、音波は壁により反射するため,壁がスピーカの役割を果たします。さらに,波の山どうし,谷どうしが重なると増幅し,山と谷が重なると打ち消し合うという波の性質を利用して,壁とあなたとの間に音を最大に増幅するポイントを複数の超音波スピーカにより構築します。すると,あなたはまるでそこから音が出ているように音像を感じるのです。このようにして空間内のどのポイントにも音像をつくることができるため,たとえば人を映し出す立体映像と組み合わせれば,まるでその人が話しているような臨場感の演出も可能になります。

常識として見落としがちな期待に応える

fig-nishiura私たちは「何もないところからは音はしない」「電車が通ればうるさい」など当然と受け入れていますが,実は「もっとこうだったら,という課題や期待が意外とたくさんある」と先生は言います。それゆえ,実際の集音など,音と直接触れ合う機会を重要視し,隠れた声に耳を傾ける先生。次は「小さな騒音を気にならなくする快音化技術と音像プラネタリウムを組み合わせ,新しい音環境を提案したい」と語ります。「音」の研究は,まだまだ私たちの「常識」を覆す魅力にあふれているのです。

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